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第6話 女だ?!

鉄格子の中でブルブルと震える『怪獣』の姿をを目の当たりにいた俺は思わず絶句してしまった。なぜならイメージしていたものと、その者はあまりにかけ離れていたからだ。


「助けて......」


『怪獣』? は目に涙をいっぱい溜めて、俺に救いを求めて来ている。


「おい、これが本当に罪人か?」


「見てくれに騙されちゃいかん。極悪人だ」


今、チョビが言うところの『極悪人』をそのまま言葉にするなら、


①透き通るような金髪

②4,000等身とまでは言わないがバランスの取れた8等身

③すらりとしたスリムなボディ

④女性ホルモン多めの皮膚

⑤やたらと美形な顔立ち


そんな容姿を持ち合わせた『子供』だった。確かに見てくれだけじゃ一概に判断は出来ないが、少なくとも『極悪人』の目じゃ無い。『極悪人』が涙を貯めて『助けて......』って言わんだろ......


「まだ子供じゃん」


「子供じゃ極悪人になれないのか?」


「......話にならん」


取り敢えず1人目はスルーした。とにかく1通り見させて貰いたかったからだ。結構大勢居そうだし......1人1人議論してたら日が暮れちまう。俺はさっさとチョビに背を向け、再び歩き始めた。


コツコツコツ......

 

 コツコツコツ......


通路は一直線、左右両側にに牢屋は果てしなく続いていた。個室も有れば、相部屋も有る。所々に松明が灯されてるけど、全然照度が足りてない。遠くまでははっきり見通せないが、すすり泣く声の数からすると、50人? いや100人以上は居るのかも知れない。


「このイケメンは?」


「極悪人だ」


「この可愛い子供は?」


「極悪人だ」


「この8等身は?」


「極悪人だ」


「本当にそうなのか?!」


「そうだ」


とにかく、ここに閉じ込められてる『極悪人』は、総じて美形、若者のみ。悪い事をすると、みんな美形になるってか? そんなの有り得ん話だろ?! 


そんなこんなで......俺が首を傾げながら『牢屋街』を徘徊していると、目の前でいきなり寸劇が始まった。


「ほらっ、しっかり歩け!」


「うっ、うっ、うっ、酷い......」


左右から屈強な『自警団』に腕を掴まれながら、若者が引き摺られて来てる。もちろん『美形』。しかも素っ裸だ!


このまっ昼間から、こいつらは何やってんだ?! などと勝手に卑猥な事を想像しながら、俺は思わず目を覆ってしまった。


同性なんだから、別に赤面する必要は無いんだけどさ......多分、つい最近までオリビアだった事が影響してるんだと思う。まだまだ俺の頭の中では、『女』の感情が残ってるって事なんだろう。


まぁ、そんな事はどうでもいいとして......この若者は一体何で素っ裸? そんでもって何をされて来た? 謎は深まるばかりだった。


「また入ってろ!」


バサッ!


「うっ......」


気付けば、牢屋の中へ投げ込まれてる。これはもうチョビに聞くしか無い。


「どう言う事なんだ? あの若者は一体何をされたんだ?!」


「まぁ、何て言うか......更正の為のカリキュラムを受けて来た訳だな......」


「更正の為のカリキュラム? 何だそりゃ? ちゃんと説明しろ」


「すっ裸にされてんだぞ! そんなの聞くだけヤボだろ。まぁ、最初は抵抗が有るみたいだけど、何度かやられてるうちに病み付きになる奴も多いって話だ。それはそれでいいんじゃないか?」


「......」俺は思わず、絶句してしまった。


『カリキュラム』と『素っ裸』を掛け合わせれば、『強制◯◯』しか思い浮かばない。しかも『聞くだけヤボだろ』って言ってるくらいだから図星なんだろう。勢いで入隊してしまったこの『自警団』に、俺が少なからず疑問符を抱いたのは、きっとこの頃だったと思う。更に追い討ちを掛けるかのように、寸劇第2幕がその直後に始まった。


「よし、お前! カリキュラムの時間だ。牢屋から出ろ!」


カシャ。


見れば今度は、屈強な『自警団』2人に腕を掴まれ、1人の若者が牢屋から出て来た。見た目20才過ぎ。さっきの子供よりは遥かに落ち着き払っている。むしろ『自警団』達を威嚇するようなオーラすら感じた。


そんな様子を見たチョビは、直ぐに解説を始めてくれた。どうせ俺から問い詰められると思って、先手を打って来たんだろう。


「こいつは、今日が初めてのカリキュラムだ。まぁ、じきに慣れるんじゃないか? って言うか、慣れるしか無いんだけどな。ハッ、ハッ、ハッ」


!!!


俺はその若者の姿を見て直ぐに分かった。


こ、こいつは『男』じゃない! 


『女』だ!



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