第5話 なんじゃこりゃ?!
ザッ、ザッ、ザッ......
ザッ、ザッ、ザッ......
俺はチョビに連れられて、『砦』内をくま無く歩いて回った。この足で歩いて、この目で見て、この耳で聞いて、そしてこの手で触れてみた。とにかくこの大陸、そしてここに暮らす人間の事を少しでも多く知りたい......きっとそんな気持ちの現れだったんだろう。
『オリーブ大陸』が繊細なら、この『ポパイ大陸』は大雑把。第一印象としては、凡そそんなところだ。とにかく建物、人間、そして全てにおいて、スケールが大きい。ただ何と言うか、適当って言うのか、いい加減って言うのか......建物が崩れ掛けてても、平気で生活してるし。地震でも来ようものなら、きっと崩れ落ちてくるだろう。多分『男』と『女』の気質の違いが、そのまま街並みに現れてるんじゃないだろうか。
「こりゃあ、『砦』って言うか、街だな」
俺は思った事をそのまま口にしてみた。
「ああ、この『砦』の中は、一種の独立国家みたいなもんだからな。みんながそれぞれ外で金を稼いで来てこの『砦』を豊かにしてる。確かに見た目は『街』そのものだよな」
「なるほど......ところで今稼いでるって言ってたけど、収入源は何なんだ? まさかボランティアで『自警団』やってる訳じゃ有るまい。誰か協力なスポンサーでも付いてるのか?」
どいつもこいつも、豊かな身なりをしてやがる。食べ物も溢れ返ってるし、金銀がやたらと目に付く。立派なスポンサーでも付いていなけりゃ、こんな豊かな生活は有り得ん話だ。
「スポンサーか......強いて言うなら、この大陸で暮らしてる全ての人間かな......俺達は、人々の命を守るが為に、毎日のようにならず者達と戦ってる。黙っててもみんなが俺達に富を与えてくれるって訳だ」
「なるほど......そう言う事か」
きっと2,000年後で言うところの『クラウドファンディング』みたいなものなんだろう。正直、この時点ではその事に対し、それ以上深く考える事はなかった。多分『自警団』イコール『正義の味方』......そんな先入観が俺の頭の中を支配していたに違いない。思い込みってもんは、実に恐ろしいもんだ......
やがて郊外までやって来ると、その先では厳つい扉が俺達を『とおせんぼ』してた。両脇にはこれまた厳つい豪傑擬きが目を光らせて、新顔の俺を睨み付けてやがる。この連中が『自警団』と名乗ってる以上、この先が何なのかは雰囲気で大体分かったけど、一応形式的に聞いてみた。
「ここはなんだ?」
「『牢屋』さ。罪人達をここに押し込めてる」
思った通りだ。ならば一体どんな奴らが押し込められてんのか? 今度はそっちに興味が湧いてくる。てな訳で......
「中を見させてくれんのか?」
「もちろんOKだぜ」
『ならず者』と聞けば......怪力、狂暴、巨漢、人相悪い、いわゆる熊みたいな風貌が自然と頭に浮かんで来る。きっと誰もがそうだろう。
コツコツコツ......
コツコツコツ......
そんな『ならず者』を頭に描きながら、俺はチョビの後に付いて階段を下りて行った。『牢屋』と言えば、やっぱどこでも地下が定番らしい。
一歩前へと足を踏み出す度に、悪しきイメージがどんどん増幅されていく。地下に降り立った頃には、それがいつしか怪獣レベルにまでランクアップしていた。『バラモス』とか『ゾーマ』とか『ムドー』とか......まぁ、そんなとこだわな。
そんでもって遂に、俺は1匹目の怪獣とご対面を成し遂げた。
「な、なんじゃ、こりゃ?!」