表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/133

第2話 誰の血を引いてるんだ?

気付けば20人程の人間が、アップアップしながら水面に浮いてるのが見える。陸までの距離は凡そ1キロってとこだろう。海の男達とは言え、この波の高さ、潮の流れの速さを考えれば、生きて帰るには少しばかり難儀を要するに違いない。


置いて帰るにはちと気が引けた。俺はこれからこの大陸に上陸する訳だし......あまり大きな遺恨を残し過ぎても、後の行動に支障を来すだろう......


と言う訳で......俺は目の前で溺れ掛けてる大男に手を差しのべてやった。まぁ、飴と鞭の使い分けってやつかな......


そんな仕草に気付いたイルカ達は、天敵たる漁師達を次々と背に乗せ始めてくれた。彼らは頭がいいだけじゃ無く、優しい心も持ち合わせてるみたいだ。にくいね!


さすがのこいつらも、ここでイルカ達に助けられれば、少しは恩義を感じて、イルカ漁を止めるんじゃ無かろうか......そうなってくれる事を俺は切に願った訳だ。


それはそうと......さっきから気にはなってたんだが、どこを見渡しても俺と同じ『男』しか居ないじゃないか。しかもやたらと厳つい奴ばかりだ。もしかしてイブやマミーみたいな『女』は居ないのか?......何か嫌な予感がするけど、まぁ焦らなくても、陸に上がってみればきっと分かる事だろう。


そんなこんなで......疲労困憊の『男』達を連れて、漸く俺はこの『新大陸』の砂浜に上陸を果たした訳だ。すると、そんな真っ白な砂浜には、顔を真っ赤にした偉そうなおっさんが、仁王立ちして俺を睨み付けている。風貌、オーラからして、多分こいつらの親玉なんだろう。


文句を言いたいならはっきりと言えばいい。ただ俺は一歩も引くつもりは無いぞ! やるならやってやる! などと身構えてたら、やっぱ文句を言って来やがった。



「どこの馬の骨だかは知らんが、よくも『自警団』の漁を邪魔してくれたな! 許さん、ぶった切ったる!」



俺が馬の骨? こいつは目が悪いのか?......どう見ても人間だろ。まぁ、細かい事はいいとして......よし、言うべき事は、はっきりと言っておくべし!



「お前達が何をしようと、俺の知ったこっちゃ無い。ただ人間の友を殺す事だけは許さん! 俺の言いたい事は......それだけだ。死にたくなきゃ失せろ!」



正直まだ俺は、この大陸の事を何も知らない。地形の事も、人間の事も、文化も、しきたりも、食も住も何もかもだ。冷静に考えれば、初めて出会った同族なる『人間』と、ケンカしてる場合じゃ無い事は分かってる。共存しなきゃ人間は生きていけない訳だからな......


でも俺は、損得勘定よりも大事な物差しが有ると信じてる。恩義には報いなきゃならん。例え相手が動物であってもな......恩義を忘れたら、人間は下等動物と何ら変わらんだろ!


と言う訳で、俺は初めて出会ったこの『人間』達20人にケンカを売ってしまった訳だ。もちろん『失せろ!』と言ったところで、こいつらが素直に消えるとは思っちゃいない。



「野郎ども、掛かれ!」



思った通りだ。ほうほう、剣やら槍やらモリやら......お前らいつもそんな物持ち歩いてんのか? 銃刀法違反で捕まるぞ。でもまぁ、いいだろう......相手になってやる!



「まとめて掛かって来やがれ!」



てな具合で、一気に『果し合い』が始まった訳だ。丸腰1人VS重装備20人。まぁ、相手に取って不足無しってとこだわな......



「死ねや!」


「往生せいや!」


「串刺しじゃあ!」



バコンッ!


正直、こいつらの動きが止まってるように見えた......



ボコッ!


身体が軽くて宙に浮いてるみたいだし......



ドスッ!


身体の奥底から力が無限大に涌き出て来る......



ベコッ!


俺は一体、誰の血を引いてるんだ?......



............


............


............



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ