第10章 運命の出逢い 第1話 沈没する!
これが新大陸か......
俺は突き進むイルカの背の上で、思わず生唾を飲み込んだ。果てしなく広がる海岸線、ポロロッカ山に勝るとも劣らぬ壮大な山脈......俺が見た最初の景色とは、凡そそんなものだった。
人食いサメとクジラに襲われながらも、未だこうして生きていられんのも、みんなお前達のお陰だ。ありがとよ......
パン、パンッ。
イルカの背中を2回ほど叩くと、そんな命の恩人も、キュ~、キュ~......って、鳴き声で応えてくれる。
もしかして俺の言葉を理解してるのか?......実際のところは分からんけど、意思が通じ合ってる事だけは間違い無いと思う。こいつらは、他の魚や哺乳類と違って格段に頭がいい。きっとこれからも俺達人間と、持ちつ持たれつの良きパートナーで有り続けてくれるんだろう......だからこそ俺は許せなかった! そんなイルカ達にモリを突き刺した不届き者達の事を。
きっと、この新大陸にも多くの人間が住んでるんだろう。このイルカに突き刺さってたモリがその証だ。まずこの大陸の人間に会ったら、開口一番言ってやりたい。このイルカに謝れ! ってな。それで金輪際イルカ狩りを止めろって啖呵を切ってやるつもりだ。
正直、俺がそう願ったからかどうかは分からない......でも突然そいつらは現れた。
ヒュルルルル......ブスッ!
キュ~、キュ~!
「なっ、なんだ?!」
気付けば、俺を取り囲む20匹のイルカ達が揃ってパニックを起こしている。よくよく見て見れば、先頭を行くイルカの背中から、大量の血が吹き出してるじゃねぇか!
モリだ!
さては、来やがったな......許さん! 絶対に許さんぞ!
「潜れっ!」そんな叫び声を上げながら、ボディにしがみ付くと、直ぐに俺の言葉を理解してくれたみたいだ。ゴゴゴゴッ......一気に潜水を開始する。
多分距離にして30メートル以上は離れてたんだろう。でもこいつらの背びれと尾びれに掛かっちゃ、そんな距離を縮めるのに瞬きする程度の時間も必要無かった。
水中で上を見上げてみれば、長さ5メートル程の黒い影が3つ。呑気ににプカプカ浮いてやがる。全部で3隻か......よし、まずは先頭の船から始末してやろう!
俺は満を持して指を天に向ける。すると、ガガガガッ......またしてもそんな俺のゼスチャーを理解したイルカは、一気に急浮上を開始する。そして、バサッ! 気付けば空中をラッセンの絵の如く舞っていた。
「なっ、なんだ?!」
「い、いつの間に?!」
さぞかし驚いた事だろう......なんせ、いきなり頭の上に現れたんだからな。俺は電光石火の如く、「あらよっと!」見事船に飛び降りた。
「テメーら、命の恩人達に何しやがる?!」
バコンッ!
「うわぁ......」
ドスッ!
「ゲボッ......」
パシッ!
「ひえー......」
チャンポン、チャンポン、チャンポン......
多分、5人以上は乗ってたんじゃ無かろうか。とは言っても全員を海に突き落とすまでに、3秒と掛からなかった。これじゃあ準備運動にもならん。
よしっ、一丁上がり! はい、次!
振り向いてみれば、2隻揃って距離10メートル。泳いで行くのも面倒だったんで、俺は足元に転がってたモリを、エイッ! エイッ! と2回程投げ飛ばしてやった。もちろん狙ったのは人間じゃ無い。船の横っ腹だ。
ブスッ! ブスッ!......
狙いに狂いは無かった。見事横っ腹にモリは命中! ピュ~水が吹き出してるのが見えたかと思えば、次の瞬間には、船がどんどん傾いていく。
「うわぁー沈没する!」
「なんなんだあいつは?!」