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ハヤシライスみたいな

作者: あまね

 雨が降る季節に、中の良い友達と傘でチャンバラごっこをするような、まだまだ、あどけなさが残る小学校時代の事だ。


 父とスーパーに夕飯の買い物に出かけ、なにが食べたいか聞かれた。


「ハヤシライスが食べたい」


 そう答えたら、父は、ため息をつき一言


「お前は、母さんの子だな」

「当たり前だよ」


 父が何を言っているのかと、さっぱりわからなかったが、とりあえずその日、父さんが手にしたのは、カレーのルーだった事だけは覚えている。


 今思い返すと、なんと理不尽な事をされたのであろうか。


 何が食べたいと聞かれたのに、ハヤシライスの類似品のカレーを食べさせて、誤魔化すとはひどい所業だと、泣いた記憶も出てくるが、それはまた記憶の方隅にでも追いやろう。


 今思えば、あれはアレだ。


 世間一般で言うところの、週刊誌の男性向けマンガを頼んだのに、月刊誌の同タイトルをのものを、間違えて買ってきてしまう母親のようなものだったんだろうと思う。




 雨が降ってきた事を喜ぶような、友人はいなくなり、傘でチャンバラごっこする事もなくなったが、時たま居合いぎりの真似ごとをしたくなる。


 少しだけ大人に近づいたということだろう。


 一人でもそれなりに人生を楽しめるという事と、それなりに答えが発掘される年だと言うことだろう。


 夕飯にハヤシライスを作っていると、父さんが仕事から帰ってきた。


「おーハヤシライスか」

「ハヤシライスの存在は知っているのか」

「毎年毎月食べていれば知ってるわ、何だよイヤミたらしいな」

「小さい頃、ハヤシライス食べたかったのにカレーを出されたんで」


 牛肉と玉ねぎだけでこんなに美味しいのは、ハヤシライスを除いたら、牛丼だけだではなかろうか。


 カレーライスとは、似ても似つかないのに。


「小さい頃ねぇ、可愛いげがないお前に、可愛いさを学ばそうとカレー食べさせてたのに、可愛いげもなく育ったんだからな」

「あぁそういう事」


 なるほど、子供にカレーという組み合わせは、あざとさにも似た子供らしさというものが、にじみ出てくる。


 ハヤシライスには、残念ながらそういうイメージは、全く浮かばない。


「お前、母さんに似て、本当に可愛いげもなく成長しているから、気をつけろよ、人付き合いとかそんなんじゃ彼女もできないぞ」


 確かにそう言われたら彼女がいるイメージも浮かんでこない。


 先ほどから母さんをもディスっている気もするが、大丈夫なのだろうか。


「母さん可愛いげないと思うなら、父さんは何で付き合ったの?」

「そりゃあ父さんはカレーもハヤシライスも食べれる大人だから」


 なるほど。


 カレーライスみたいな可愛いげが欲しいけど、なくてもいいと。


 しかし、子供時代も終わり大人に近づいている今可愛いげのようなものは必要だろうか?


 雨の日にチャンバラごとをするような大人がいないが、ゴルフの練習をする大人はいる。


 カレーライスのような可愛いげは必要なくて、ハヤシライスみたいな美味さだけで勝負できる大人の方が良いのだはないだろうか。


「つまりはハヤシライスこそが大人に求められるもの」

「全く分かってないみたいだけどめんどくさいから夕飯にしよう」


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