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魔帝  作者: 松本 力
ソルドの墓
190/192

ソルドの墓 9

 いよいよ終わりが近づいたころ。


「恐らくあなたがこの本を読んでいる頃、私は死んで、骨になっているか、腐って無くなっているか、あるいはミイラにでもなっていることだろう。

 あいにくこの封印は、なにがしかの生け贄を必要とする。

 神の力さえ防ぐのだ、それは致し方ない。

 そして生け贄には、やはり人に言えない内容だけに、私がならざるを得ない。

 正直、死ぬのは怖い。

 もう四十五歳にもなり、自分なりになすべきことをしてきたつもりだ。

 ある程度の結果も出ただろう。

 だがそれでも、怖いものは怖い。

 なぜこんな所で、一人で死んでいくのだろう。

 そう思うとやりきれない。

 仕事としてあるいは人として、そうせざるを得ないからそうしているだけであって、できることなら女をはべらせて酒でも飲んでいたい。

 それに、重圧だ。

 背負うものが、巨大すぎる。

 この書を読むあなたにも、似たような重圧を与えることになるだろう。

 心残りは色々あるが、心苦しいのはそれだ」


 このページはそれまでとは違い、実に人間味のある、平凡な人間としてのソルドがいた。

およそ大賢者と称えられる人とは思えず、どちらかというと自分と似たような、少し斜に構えて拗ねたところのある、しかしそれ故に人の感情にも鋭い人物に感じられた。


 ローブは少しだけ気が楽になった。


「リーファが俺とあんたは似てるって言ってたよ。

 軽薄だってさ」


 物言わぬミイラに、彼は静かに声をかけた。

大賢者とは言えミイラはミイラ、なにも答えない。

だが、そうすることで、長い時を越えて、一人の友人と話しているような心地だった。


「さて、どうやったら帰れるのかねぇ」


 ローブは考えた。

そもそもここはどこなのか。

夢中で封印を解き、大賢者の墓所にたどり着いたが、帰ることまでは考えていなかった。


 だが彼は言った。


「どうにかなるさ」

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