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魔帝  作者: 松本 力
ソルドの墓
189/192

ソルドの墓 8

「あの旦那は、一体何なんだ?」


 それについては、さらに記述がある。


「神は魔に対し絶対ではない。

 何故なら魔王は創造神トルキスタの分身。

 よって戦士は、強力な魔封じの力を備えた。

 いずれ神がこの地上を乗り越え、魔界に侵略する際、魔封じの力が神の大きな補助となる。

 私は神にそう提案し、神はそれに応じた」


 それはありふれた終末論にも思える。

しかしそれに関与する人間が、あまりに身近にいる。

その事が、ローブをこの上なく不安にさせた。


 しばらく読み進めると、リーファについての記述が出てきた。


「大精霊ハルバンの娘として誕生したリーファは、ハルバン亡き後、実質この世界の精霊の頂点に立つこととなった。

 とは言え彼女はあの通り野心もなく、ただこの地上が平和であることを祈るだけの、可憐な乙女に過ぎない。

 だが彼女は、神や魔王さえ凌ぐ究極の力を二つ備えている。

 一つは全てを知る力。

 もう一つは、氷の封印。

 私が今回の争乱の原因について、もう少し早く気づいていれば、彼女の力を用いて、後の世に禍根を残さずに済んだだろう。

 だが、今はこの書に全てを込め、後世の賢人に託すしかない」


 ローブの予想は的中していた。

千年前の戦いは、まだ決着していない。

だからこそ再び魔界門の解放を目論む魔導師が現れ、シ・ルシオンという超戦士が現れた。

彼らは戦う運命にある。


 そしてソルドが残した遺言を、今回の戦いで何とか実現しなければならない。


「でないと、この世が滅ぶ、か。

 そこへ現れたるは救世主ローブ様?

 こんな本、見つけるんじゃなかった」


  ローブは本を置き、石の腰掛けから降りて、美しく磨かれた光る床に寝転がった。

視界の端に、大賢者ソルドのミイラが入る。


「あんた、軽薄な感じだったって?

 俺と似てるって、リーファが時々言ってる。

 戦争孤児ってのも一緒だ。

 だから俺も、運命の子?

 たまたまだってぇの。

 あんたの本に俺は出てこないし、俺はきっと、あんたほど切れ者じゃない。

 その辺の不良さ。

 あんたとは違いすぎる。

 死ぬ間際までこんな本を書いて、一人で死んでいくのに耐えられるほど、俺は強くないよ」


 彼は天井を見つめ、しばらくそのままでいた。

が、やがて起き上がり、もう一度石の腰掛けに、ミイラと隣り合わせで座り、本を読み進めた。

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