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魔帝  作者: 松本 力
ソルドの墓
186/192

ソルドの墓 5

ローブは木切れを拾い集め、焚き火から火を取り、小さな五つの建物の中にある灯籠に火をくべた。

そして再び、破壊された建物の中央に立ち、南を見る。


 柄が伸びた。

炎が微妙な影を作り、槍の柄が現れた。

同時に槍の切っ先も出現した。

そう意識して初めてわかるほどにおぼろ気だが、間違いなくそれは、三つ又槍だった。


 だがローブは、首を横に激しく振った。


「違う、そうじゃない!

 俺が探してるのは、三つ又槍じゃない、ソルドの墓なんだ!」


 ローブは叫んだ。

苛立ちを隠さず、彼は足を踏み鳴らしながら、三つ又槍の柄が伸びた方へ歩いた。

枯れ枝や低い草を踏み潰し、灯りが届かなくなったところで、彼は足を止めた。


 そこには、岩があった。

何の変てつもない、腰が掛けられそうな大きさの、黒くつるりとよく滑るありふれた岩だ。


 ローブは思わずその岩に腰掛けた。

何かあるのかと期待はしたが、何も起こらない。


「ちっ、なんだよそりゃ…」


と、落胆してうつむき、再び顔をあげる。


ローブは目を見張り、息をのんだ。


 そこには、もうひとつの三つ又槍があった。


 遺跡から立ち上る煙が炎に照らされ、渦を巻き、また別れ、天に向けた三つ又槍の形になっている。

その柄の足下は、灯籠の建物。


 それだけではない。


「まさか、古代文字?」


 偶然かもしれないが、古代の文字が二つ、煙に浮かんでいるように見えなくもない。


 ローブは転がるように走った。

瓦礫の建物を迂回し、真北に位置する小屋に飛び込む。

そこで、息を落ち着けながら、彼は古代語で叫んだ。


「天地!」


 その途端、彼は別の場所にいた。


 そこは、冷たく、幾分乾燥した小部屋だった。

部屋は、壁、床、天井が緑色に発光する鉱石のタイルで包まれ、ぼんやりと明るさがあった。

中央に石でできた机と椅子がある。


 そしてその机には、朽ちてはいるものの鮮やかな青い法衣をまとったミイラが、突っ伏していた。


 顔の横には、見たことのある古文書が、開かれたままある。

バザ大聖堂の地下にあった、あの一三八冊の古文書と同じものだ。


「すげぇ…」


 思わずローブは呟いた。


 ここは、紛れもなく、大賢者ソルドの墓だった。

そしてそこに伏せているミイラは、間違いなくソルドその人であろう。

トルキスタの三聖人のうち、ローブは二人まで、その存在を自らの目で確認することとなった。

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