ソルドの墓 5
ローブは木切れを拾い集め、焚き火から火を取り、小さな五つの建物の中にある灯籠に火をくべた。
そして再び、破壊された建物の中央に立ち、南を見る。
柄が伸びた。
炎が微妙な影を作り、槍の柄が現れた。
同時に槍の切っ先も出現した。
そう意識して初めてわかるほどにおぼろ気だが、間違いなくそれは、三つ又槍だった。
だがローブは、首を横に激しく振った。
「違う、そうじゃない!
俺が探してるのは、三つ又槍じゃない、ソルドの墓なんだ!」
ローブは叫んだ。
苛立ちを隠さず、彼は足を踏み鳴らしながら、三つ又槍の柄が伸びた方へ歩いた。
枯れ枝や低い草を踏み潰し、灯りが届かなくなったところで、彼は足を止めた。
そこには、岩があった。
何の変てつもない、腰が掛けられそうな大きさの、黒くつるりとよく滑るありふれた岩だ。
ローブは思わずその岩に腰掛けた。
何かあるのかと期待はしたが、何も起こらない。
「ちっ、なんだよそりゃ…」
と、落胆してうつむき、再び顔をあげる。
ローブは目を見張り、息をのんだ。
そこには、もうひとつの三つ又槍があった。
遺跡から立ち上る煙が炎に照らされ、渦を巻き、また別れ、天に向けた三つ又槍の形になっている。
その柄の足下は、灯籠の建物。
それだけではない。
「まさか、古代文字?」
偶然かもしれないが、古代の文字が二つ、煙に浮かんでいるように見えなくもない。
ローブは転がるように走った。
瓦礫の建物を迂回し、真北に位置する小屋に飛び込む。
そこで、息を落ち着けながら、彼は古代語で叫んだ。
「天地!」
その途端、彼は別の場所にいた。
そこは、冷たく、幾分乾燥した小部屋だった。
部屋は、壁、床、天井が緑色に発光する鉱石のタイルで包まれ、ぼんやりと明るさがあった。
中央に石でできた机と椅子がある。
そしてその机には、朽ちてはいるものの鮮やかな青い法衣をまとったミイラが、突っ伏していた。
顔の横には、見たことのある古文書が、開かれたままある。
バザ大聖堂の地下にあった、あの一三八冊の古文書と同じものだ。
「すげぇ…」
思わずローブは呟いた。
ここは、紛れもなく、大賢者ソルドの墓だった。
そしてそこに伏せているミイラは、間違いなくソルドその人であろう。
トルキスタの三聖人のうち、ローブは二人まで、その存在を自らの目で確認することとなった。