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魔帝  作者: 松本 力
ソルドの墓
185/192

ソルドの墓 4

 戦士はしばらく考えていたが、やがて言った。


「俺は戦いたいから戦う」


 それ以上戦士は何も言わなかった。

オデュセウスは戸惑ったが、しかしそういう事もあるのかと、何となく納得した。

また、何かしらの理由がなければ戦えない、例えば国のためとか、人々のためとか、そういうのが必要な自分とは、決定的な違いを感じた。


 深夜、オデュセウスは久々にこの遺跡の空をじっくり眺めた。

あの時と同じだが、あの時はもっと絶望していた。

今は、仇敵であるはずの戦士と行動を共にし、次の生き方をしている。

不思議だった。


「うぅ、寒い」


 ローブが目を醒ました。

彼は伸びをして、オデュセウスの方を見た。


「お陰でよく寝たよ。

 もう野宿にも慣れた」


 彼は毛布を抜け出し、また近くをうろつき始めた。


「綺麗な星だ。

 北の星がよく見える。

 少し低いところに見えるんだな」


 ふとその時、ローブは違和感を感じた。

その違和感の原因を探っていく。


 ぐるぐると遺跡を早足で歩き、そして答えが出た。


「何でここには、三つ又槍がないんだ?」


 オデュセウスの所に戻ってきて、ローブは尋ねた。


「あんた、ここで三つ又槍を、見たことがあるか?

 トルキスタ聖教の施設には、かならず真北に向けた三つ又槍があるはずなんだ。

 ここは大賢者ソルドの墓なんだ。

 なくてはならないんだ」


 彼はまくし立てた。

だがオデュセウスは、そんな記憶がなかった。


 声に気づいてシ・ルシオンも起きる。


「俺は見ていない。

 地形にもそれらしいのはなかった」


 戦士は、戦場を把握するように、この場所を正確に把握していた。

彼が言うことは、恐らく信頼できた。


「北は、あぁあれだ、あの星だ」


 北の星が、低く、白く煌めいている。

ローブはそれを見据えながら、遺跡をゆっくりと歩いた。

破壊された建物のホール中央に来たとき、星の真下に、灯籠のある小さな建物のひとつが揃った。


 左右を見ると、少し北に二つ、少し南に二つ、同じ建物がある。


「これは、槍だ」


 しかし柄がない。


 南に振り返る。


 視線の先には、闇しかない。

星空の足元に広がる、乾いた夜の大地。


「火だ」

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