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魔帝  作者: 松本 力
ソルドの墓
184/192

ソルドの墓 3

「駄目だ、わからねぇ。

 どうやったら入れるかぐらい、ついでに訊けばよかった」


 ローブは頭を掻いて、顔を子供のように歪めた。

過去百年、幾多の考古学者やまじない師、あるいはマイクラ・シテアのような本物の魔導師をも拒み続けてきたのだ。

大した知識のない彼が、そう簡単に扉を開けるとは思えなかった。


「また女神様に頭を下げるか?

 果たして口を割るのかねぇ」


 先日はいやがるリーファを脅すような格好で、ソルドの墓の場所を聞いた。

最後の書のことではない、という論理で、恫喝まじりに攻めた。

だが、そうそう繰り返せないだろうし、やりたくもなかった。


「男だったら平気なんだが、女にするのは、悪者になる気がして嫌なんだよな」


 到着してからしばらくは、ぶつくさ言いながら歩いていたが、やがてローブは、疲れの限界もあり、馬車に積んである毛布を引っ張り出し、横になった。


「悪いが、俺はもう寝るよ」


 そう言って彼は、拗ねたように寝入ってしまった。


 夜になり、少し風が出た。

この辺りは温暖ではあるが乾燥した地域であり、砂漠ほどではないが幾分冷え込む。

シ・ルシオンは近くで木切れを集めて、火を起こした。

オデュセウスは、静かにその様子を見守っていた。


 シ・ルシオンは火のそばで、巨大な剣を傍らに置き、横になる。


 ふと思い立って、オデュセウスは尋ねた。


「シ・ルシオン、あなたは記憶がないと言った。

 怖くないのか」


 戦士は少し考え、答えた。


「怖れる理由がない。

 現に俺は、過去に殺されるわけでもなく、生きている」

 

「過去に関わった人のことは、気にならないのか」


「気にしても仕方ない。

 何も起こらない」


 オデュセウスは言葉に詰まった。


 だが、彼はこの戦士が、ひどく孤独な存在に思えた。


 オデュセウスは、ホルツザムの先鋒突撃隊長として、多くの結果を残してきた。

しかしそれに伴い、感覚を共有できる相手が減っていった。


 シ・ルシオンは、極めて優れた戦士であり、それ故多くの恨みを買っていて、しかし戦いをやめない。

そして誰かに理解してもらおうともしない。

ただただ、戦う。

その孤独は、想像を絶した。


「あなたは、何のために戦うのだ」


 さらにオデュセウスは尋ねた。

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