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最後の書 10
「あ、あの…」
リーファは怯えたように震え、涙をこぼした。
「いいから答えろ!
大事なことなんだ!
ソルドはどこで死に、その亡骸はどこにある!」
「マルゴーよ!」
金切り声でリーファは叫んだ。
彼女はしばらく呆然として、やがて激しく震え始めた。
氷壁の中で崩れ落ち、両手で顔を覆い、嗚咽する。
「ひどい、ひどいひどい、こわい…」
ローブは苦虫を噛み潰したような顔で、彼女から目線を逸らす。
舌打ちをし、金色の髪を握る。
「女を泣かすのは趣味じゃねぇんだ。
勘弁してくれ」
彼はそれ以上言葉も浮かばず、立ち往生した。
目を強く閉じ、下唇を噛み、そして氷壁に背を向けた。
彼は何も言わず、聖地から出ていった。
その姿は、逃げるようだった。
それまで黙って岩場にもたれていた巨人は、身を起こし、リーファの正面に立った。
「お前はすぐ泣く」
ため息混じりに巨人は言った。
「俺も女が泣くのは苦手だ。
せめてまた今度、花でも摘んでくる」
野太い声でそう言い残し、巨人は巨大な剣を背負い直して、聖地から立ち去った。