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魔帝  作者: 松本 力
最後の書
181/192

最後の書 10

「あ、あの…」


 リーファは怯えたように震え、涙をこぼした。


「いいから答えろ!

 大事なことなんだ!

 ソルドはどこで死に、その亡骸はどこにある!」


「マルゴーよ!」


 金切り声でリーファは叫んだ。


 彼女はしばらく呆然として、やがて激しく震え始めた。

氷壁の中で崩れ落ち、両手で顔を覆い、嗚咽する。


「ひどい、ひどいひどい、こわい…」


 ローブは苦虫を噛み潰したような顔で、彼女から目線を逸らす。

舌打ちをし、金色の髪を握る。


「女を泣かすのは趣味じゃねぇんだ。

 勘弁してくれ」


 彼はそれ以上言葉も浮かばず、立ち往生した。

目を強く閉じ、下唇を噛み、そして氷壁に背を向けた。


 彼は何も言わず、聖地から出ていった。

その姿は、逃げるようだった。


 それまで黙って岩場にもたれていた巨人は、身を起こし、リーファの正面に立った。


「お前はすぐ泣く」


 ため息混じりに巨人は言った。


「俺も女が泣くのは苦手だ。

 せめてまた今度、花でも摘んでくる」


 野太い声でそう言い残し、巨人は巨大な剣を背負い直して、聖地から立ち去った。

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