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魔帝  作者: 松本 力
最後の書
180/192

最後の書 9

 猛烈な速さで駆ける魔馬車に振り落とされまいと、必死でつかまりながら、ローブは叫ぶようにしゃべる。

一方巨人は、涼しい顔だ。


「オデュセウス、あんたはどう思う?」


 ローブは魔馬車に尋ねてみる。

だが堅物のオデュセウスは、


「私には、わかりません」


と答えるだけだった。

ローブはくそまじめなオデュセウスと喋るのが、若干苦手だった。


「まぁいい。

 ともかく、もう一度女神様に尋ねるしかねぇ。

 現世に残る記録はおそらく、もはや女神様の頭の中にしか存在しないんだからな」


 数日後、彼らは再びガラシェにやってきた。

先日と同じく防寒着を整え、幾ばくかの食料を背負い、聖地に向かう。

翌日の夕方には、彼らは聖地に到着した。


 それほど日が経っていないので、女神のいる氷壁はまだ雪に覆われていなかった。

黄昏の朱色に輝くそれは、幻想的だった。


「今度は本のことじゃねぇ。

 ソルドの事だ。

 大賢者ソルドが、どういう経緯で、どうなって死んで、今その墓所がどこにあるのか、教えてくれ」


 ローブは有無を言わせぬ強い口調で言い放ち、登山の疲れを忘れた様に早足で氷壁に詰め寄った。


 氷壁の中でリーファは、少し戸惑った顔をしていた。


「あの、ソルドは…」


「最後の書のことは喋るなって言ったんだろ?」


「あ、はい。

 でも、ソルドがどうなったかは…」


「あんたは知ってるんだろ?

 最後の書の事は、今はどうだっていい。

 ソルドの最期を知り、その墓所を確認したいだけだ」


 リーファは答えに窮した。

ローブはその様子を、刃物のように鋭い目で見据えた。


 彼はリーファの後ろに、大賢者ソルドの影を見ていた。

極めて緻密に設計されたあの聖典を構築したソルドが、自分の死を歴史から隠した。

しかし、完全に隠したわけではなく、今ローブが辿っているルートで突破できるように、設計されていたとしか考えられない。

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