最後の書 7
フェリスは子供のようなふくれ面で、少し伏し目で横を向いた。
いつも穏やかな彼女の別な姿が、ローブを少し和ませた。
「まぁ、呼んでくる」
ローブはいたずらっ子のように歯を見せて笑い、手をひらひら振って、教会の粗末な入り口から出ていった。
「もう…」
置き去りにされたフェリスは、一人そわそわしていた。
二十余年の間、何度も何度も、数え切れないほどに、彼女は死を考えた。
女性としての最低限の誇りを何度も不潔な者たちに踏みにじられ、純潔であるべき司祭としても、もはや自分自身の中で成立しなかった。
自分自身が決定的に矛盾していた。
神に助けを求めることさえ、罪に感じた。
夜ごと首筋にナイフを這わせたこともあった。
粗末な夕食の後、薄暗く狭い教会の食堂で毒の瓶を握り、何時間もじっとそれを見つめたこともあった。
だがその度に、野太い声が彼女の脳裏に、心に、響き渡った。
『ここはお前の戦場だ。
祈るのに飽きたら、何かやって見せろ』
背を向け立ち去る間際、わずかに振り返って言ったその言葉が、いつも彼女を引き留めた。
彼女は生きた。
地獄をさまようような苦痛と寄り添いながら、生き続けた。
その力が、バザを甦らせた。
彼女のか細い手が、道を掃除し、花を植え、病人に水とわずかな食料を与えた。
ひどく粗末な教会に子供たちを呼び、賛美歌を歌った。
彼女はいつも汚かった。
絶世の美女と言って良いほどの美貌が、すす汚れ、見る影もなかった。
だが、彼女はやがて、それを補ってあまりある、輝く笑顔を手に入れた。
彼女の教会には、花がいつも咲いた。
バザは、彼女の教会を皮切りに、美しくなっていった。
ローブが現れたのはその頃で、彼はバザ再興を彼女に賭け、様々な援助を行った。
だが彼女は、命がけの努力を重ねた今でも、あの頃と同じ矛盾を抱えていた。
彼女は今、二十余年の矛盾と、再び向き合う時を迎えたのだ。