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魔帝  作者: 松本 力
最後の書
173/192

最後の書 2

 ローブは古文書を、多少粗っぽく左手で閉じ、呼び鈴を鳴らした。

すぐにひょろ長いフォルタが、隣の部屋から顔を出す。


「ガラシェへ行く。

 ロド殿によろしく言っといてくれ」


「はぁ」


 すでにローブは身支度を始めている。

こうなるともう止められない。


「ロド殿にはなんと」


「だからよろしくって。

 あ、それから、旦那と馬車殿も一緒に行くから。

 何かあったら、しばらくがんばってねって。

 そうそう、フォルタ、お前は俺がいない間、俺の全権だから。

 よろしく」


 この言葉に、フォルタは息を呑んだ。

つまり、ローブ不在の間、ローブが通常持つ権限や判断を全て代行せよ、というのだ。


「いやいや」


「大丈夫大丈夫。

 大体お前以外に誰が俺の代理ができるんだよ。

 じゃぁな」


 そう言い残すと、ローブは多少の荷物だけ持って、さっさと部屋を出ていってしまった。


「これは、参ったな」


 フォルタは一人呆然と、その責任の重大さに途方にくれた。


 ローブはそんなフォルタの事など、気にもとめていない。

ローブは、教会の雑事は勿論、余程重大かつ難度の高い判断以外で、フォルタが大きく間違うとは考えていなかった。

その程度にフォルタは有能であり、もっと彼を自由にしてやり、自分も自由になりたいと考えていた。


 ローブはその足でシ・ルシオンのいる部屋へ向かった。

入るなり、


「旦那、ガラシェだ」


と声を掛ける。


 寝台に横たわっていた巨人は、


「あぁ」


と言って起き上がり、部屋のすみに立て掛けてあった身の丈を越える大剣と、その側にあった熊革のマントを掴んだ。


 彼らはオデュセウスの馬車に乗り、一路東に向かう。

全力で走るとローブが振り落とされるので、わりと平和な速度だが、それでも普通の馬よりは随分速く、また力強い。

ローブは専用の椅子を据付け、若干乗り心地は悪いものの、それなりに旅を楽しんだ。

相変わらず彼は、教会の空気が嫌いだった。


 和平で落ち着いたホルツザムとバルダを通り抜け、少し北上。

ガラシェの山地が見えたのは、四日目のことである。

季節は秋、寒冷なこの地は、すでに随分寒かった。

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