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魔帝  作者: 松本 力
最後の書
172/192

最後の書 1

 ローブは、相変わらず殺風景な地下室で、助手のフォルタがまとめた報告書に目を通していた。

北方のルビアで起こった魔物の軍勢の襲撃がここ数週間の主題であり、すでに現地では、トルキスタ聖騎士団による援助活動も本格化している。

ただその中に、いまだに将軍ガイルの警戒が解けていないのも感じたりすると、いささかうんざりする。


「まったく、頑固なオヤジだぜ」


 とは言え、魔物の軍勢は撤退し、ガイルも順調に回復している様だ。

ルビアはおよそ平穏を取り戻しつつあるらしい。

それについては、一安心だった。


「で、だな」


 ローブは机の上に置かれ、最後の方が開かれたままの古文書に目を落とす。

これはバザ大聖堂の地下、マイクラ・シテアによって破壊された封印の間に眠っていた物である。


「どうしても、おかしい」


 これは封印の間に残されていた書の、最後の一巻だ。

千余年前、大賢者ソルドその人により記述された、大魔導師ブサナベン対策の書である。

ローブが初めて読解し、その明快で論理的な記述には日々唸らされる。


 その論理が極めて優れているだけに、その中にあるたった一つだけの矛盾が、実に違和感があった。


 全一三九巻。

マイクラ・シテアに持ち去られた物と合わせて一四〇冊になるはずだ。

そのことは明快に示してある。

しかしバザの封印の間には、一三八冊だけが残されていた。


 だというのに、ブサナベンの書の解説や魔界への対策は、既存の一三八冊で、見事完結している。

魔界門の場所や魔界門解放のメカニズムも、およそわかる。


 だから最後の書には、全体構成として意味がない。


 完璧に意味がないのだ。


「そんな馬鹿な」


と、ローブは思う。


 無意味なら、何のために隠されているのか。


 それは、最後の書の重大さを裏付ける理由にしか感じられない。


「書き損じ?

 な訳はねぇわな」

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