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魔帝  作者: 松本 力
氷の女神
17/192

氷の女神 6

「なぜ、人々は死ぬと思うのだ」


 リーファはまだしばらく泣きやまず、嗚咽をした。

美しい顔が、涙でくしゃくしゃになっていた。


 随分長い間、シ・ルシオンは待った。

リーファの嗚咽が徐々に静まっていき、ようやく彼女は少しずつ喋り始めた。


「マイクラ・シテアという魔導師がいて、その者が、人々を殺戮します。

そのための手段を今日、マイクラ・シテアは知るのです。

 その昔、トルキスタ聖教の高僧達が封印した禁断の部屋に入って、禁断の書を奪います。

 そこに書かれたことが、いずれ彼に破滅的な力を与えてしまいます。

 そして、それが更なる、取り返しのつかない災いを引き寄せます」


「なぜそこまでわかっているのなら、お前が止めないのだ?」


「私は、ただ、知ることしかできないのです。

 私は愚かで、知ってもなお、どうすることもできませんでした。

 でも、ある小さな女の子が教えてくれました。

 魔法が悪いのなら、魔法を封じたらいいと」


 リーファはシ・ルシオンを、藍色の澄んだ瞳でじっと見つめた。

その瞳には、不安や恐怖が漂いながらも、その核心には、重く厳しい決意に似た輝きがあった。


「あなたは魔封じだと、私は知りました」


「理解できぬ」


 諦めた様にシ・ルシオンは吐き捨てた。


「それは、私が愚かだからですか」


「そもそも魔導というものが本当にあるのかが、俺には全くわからぬ。

 それに、俺はお前のために何をしてやればいいのかもわからぬ。

 マイクラ・シテアという者の名も初めて聞いた。

 俺が魔封じと言うが、そんな確証はどこにある。

 わからぬことばかりだ。

 理解できぬ」


 シ・ルシオンは、小さな溜息をついた。


「俺は戦士だ。戦えと言うなら戦う。

 せめて、今俺に何をしてほしいかぐらい、言うがよい」


 その言葉を聞くと、リーファは顔を輝かせた。


「ああ、ありがとう、ありがとう」


 またリーファは泣き始めた。


 シ・ルシオンは半ばあきれていた。

女というのはこうなのか、と疑った。

彼は今まで、女を抱いたことはあるが、こんな形で関わったことはなかった。

全然彼の期待と違う反応をするし、簡単に傷ついたり喜んだり、そして泣き出す。

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