表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔帝  作者: 松本 力
月光
166/192

月光 8

 バルザムは少し苛立ち、巨大な戦斧を大きく凪いだ。


「いよいよ出張るか」


 バルザムは、わざと最前線に参加していなかった。

魔物たちは、個々は強いが、気ままでまとまりがない。

バルザムが前線にいない状態では、言わば二軍である。

そこへバルザムが参入すれば、意気は上がり、より強い軍となろう。

それは、彼がよく使う二段攻撃の形に近いものだった。


 バルザムは手勢二十ほどを率い、なだらかな雪の高台を下り始めた。

巨体が悠々と進み、やがて城壁前の主戦場へ殴り込む。

弱りかけていた魔物たちはたちどころに意気を吹き替えし、城門や城壁に激しい攻撃を浴びせた。

空からも一層の攻撃が降り注ぎ、再び魔物たちが優勢となった。


 ボルスはその様子を、第三城壁から見下ろしている。


「頃合いか」


 彼は苦い顔でそう呟く。

そして伝令に告げた。


「第一城壁から撤収だ」


 まだ決定的な危機ではない。

しかしボルスは撤収を命じた。

伝令が速やかに城壁の尖塔に向かい、やがて打楽器がやかましく鳴らされ、黄色の大きな旗が振られた。


 第一城壁の上にいた部隊は、即座に城壁の中へ階段で降り始める。

非常に迅速だった。

またこれらの部隊がほぼいなくなると、城壁内の部隊も一気に第二城壁へと撤収をした。


 見事である。

が、第一城壁は無防備となる。


 魔物たちは一気呵成に城門を攻めた。

程なく城門は打ち破られ、百ほどの魔物が第一城壁の内部になだれ込んだ。


 バルザムはどこかに違和感を感じた。


「何だ?」


 バルザムは、魔物たちが破壊された門から次々に入っていくのを見ながら、自らは足を止めた。


 およそ百が入った頃、それは現実となる。


 破壊された門の所に、見るからに頑丈な鉄柵が上から落ちてきて、再び塞いだのだ。


 バルザムは間一髪柵の外にいたが、魔物たちでもそう簡単に策を破れそうにない。


 そしてそこへ、第二城壁からの砲撃が始まる。

それだけでなく、先ほど一旦撤退したはずの第一城壁の部隊も再び現れ、取り残された魔物たちに油樽を投げ、火攻めを始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ