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魔帝  作者: 松本 力
月光
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月光 7

 まだ初日ゆえに、だらだらと休みなく続く、にもかかわらず実に激しい戦闘にも、兵士たちはしっかり耐えていたが、明日になるとどうか。

最も戦闘の多い第一城壁の部隊は定期的に入れ換えざるを得ないし、上空からの攻撃もあるので、大体全軍が多かれ少なかれ常に戦っている。

攻勢に立っても、魔物はうまいタイミングで援護を入れてくる。

城の兵士たちはよく戦っているが、明日もそれが維持できるだろうか。


「いかん、いかんぞ、馬鹿め」


 ボルスは自分の頬を両手で叩く。


「弱気になるな」


 ボルスは相変わらず城壁の縁に仁王立ちだ。

その豪胆に見える姿が、城の数万の兵を支えていた。

だが正直、彼は怖かった。

魔物の指揮官の意図がわかると、より怖くなった。

火砲や弩弓にも限りはあり、兵士たちにも限界がある。

自分にも限界がある。

だが魔物の軍勢は、その点が一番強いと見える。


「討ち出てはどうか」


 何時間かおきに、彼はそう考える。

しかし、


「馬鹿な、この城は強みだ。

 それを捨ててどうする」


と、すぐに自ら却下する。

それぐらいボルスは追い詰められていた。


 夜明けごろ、相変わらず戦闘が続く中、ボルスのもとに伝令が駆け込んできた。


「ガイル殿が?」


 ガイル生還の知らせだった。

ボルスはいても立ってもいられず走り出そうとしたが、


「ボルス様、ガイル将軍は、生きているからそのうち会いに行く。

 今は指揮に専念せよ、と仰せでした」


と制された。

ボルスは歯を食いしばり、鼻の奥で唸った挙げ句、再び城外に体を向け、大声で伝令に命じた。


「ガイル将軍帰還の旨、急ぎ全軍に伝えよ!」


 ガイル帰還の知らせはあっという間に全軍に伝えられ、それによりただでさえ組織的で高く維持されたルビア軍の士気は、最高潮に達した。


 ボルス自身、再び強い心を取り戻した。


 第一城壁の攻防は、再び激しさを増す。


 離れた場所から城壁の戦況を眺めるバルザムにも、城の軍勢が強くなったのはすぐ感じられた。

バルザムは速やかに空の魔物を控えと交代させ、援護に回す。地上の軍勢も、控えを押し出させた。


「さてはガイルが戻ったか。

 あの吹雪をどうやって切り抜けたのやら」


 城の守将は強い。

恐らく無名だが、苛烈な戦いぶりや防衛準備の周到さは、ガイルに匹敵するだろう。

そこへさらに総帥であるガイルが戻れば、より一層厄介だろう。

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