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魔帝  作者: 松本 力
月光
164/192

月光 6

「やりおる」


 鎧人形のバルザムは、まだ市街に入らず、少し見晴らしのよい場所から戦況を見ている。


「ルビア軍、侮れぬ。

 が、いきがっていられるのは精々明日までよ」


 バルザムは考えを少し改めている。

ルビアにはガイルしかいないと践んでいたが、なかなかにボルネット城の守りは整然かつ苛烈だ。

守将はどうやら業師ではないが、守備兵数万を見事にまとめ、今のところバルザム率いる魔物の軍勢を退けている。

なによりあの優れた火砲や弩弓、そしてそれを数多く準備してある周到さは、非常な脅威である。


 だが、人は疲弊する。


 休みなく攻め立てられると、心身ともにすぐ限界がやってくる。


「化け者共はその点、強い」


 バルザムが感じるに、魔物たちは人間より遥かにスタミナがある。

人を殺し、喰らうのにも満足げだ。

あまり死を恐れた様子もない。


「美しくはないが、強い」


 バルザムはふと、精悍な若い突撃隊長を思い出す。


「奴も強かった。

 それに、人として美しかった」


 バルザムは少し苦い気分になる。


「俺は、汚れていた。

 だから生き残れた」


 バルザムの視線の先で、いよいよ地上の魔物による攻城戦が始まった。

ボルネット城の第一城壁の足元は、油を使っているのだろう、猛火が上がっている。

なかなか簡単に攻められていない様だ。


  だがバルザムは焦っていない。

最初から一気に攻め落とすつもりはない。

波のように絶え間なく攻め続けることで、城の兵を疲弊させ、時が来れば一気に攻める。


「空の第二集団は、第一城壁へ攻め込め。

 陸の第二集団も城へ向かえ」


 空の部隊は、劣勢になっていた第一城壁へ上から殺到する。

すぐに魔物たちは勢いを盛り返し、下火になっていた戦闘が再び激しくなる。


 午後になり、早い黄昏になり、夜になる。


 ボルスは既に、魔物の指揮官の意図を理解していた。


「嫌らしい攻めかただ」

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