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魔帝  作者: 松本 力
月光
163/192

月光 5

 世界で他に類を見ない、最新鋭の軍事技術を持つ北の大国ルビアの砲撃だった。


 この配備計画を主導したのは、他ならぬボルスである。


 人の頭程の砲弾が、バラバラと魔物の軍勢に降ってくる。

着弾すると爆発し、命中しなくとも周囲に損害を与える。

魔物も町も、破壊される。


「次、用意!」


 鍛え上げられた兵士たちは、見事に組織的に動き、次の砲弾を一斉に準備する。


「仰角下げよ、距離計れ!」


「空の敵接近、弩兵構え!」


 空の魔物は速い。

もう目前まで来ている。

禍々しい姿に兵士たちは戦慄するが、しかし統制は乱れない。


「撃てぃ」


 巨大な弩弓から、槍のような矢が次々に放たれる。

いくつかは魔物に命中し、たまらず魔物が墜ちてくる。

墜ちた魔物は守備兵に囲まれ、たちまちズタズタにされる。


 その一方で魔物も、あるものは灼熱の炎を吹き、あるものは怪しく光る目で兵士達を石にする。


 極めて苛烈な激戦だった。


 ボルスは絶え間なくやってくる各部隊からの伝令をてきぱきとさばき、指令を出す。

ルビア軍の守備兵たちは実によく戦っている。

今のところ大きく崩れた部隊はない。


 やがて空からの攻撃は、一旦引き上げていく。


「すぐ第二陣に備えよ!」


 あるべき感触よりも敵の引き上げが早い。

こういう違和感は大体何かがある。

小手先の策か、あるいはもっと大きな何かか。

こんなときはきちんと守りを固めるに限る。


 空からの魔物は一旦引き上げたが、やはり第二波がやってくるのが見える。

その間にも地上の魔物たちは町を食い荒らし、砲弾の雨を突破して、城に近づいてくる。


 北限の朝は遅い。

戦闘が始まってしばらくすれば、もう太陽は昼時の場所に近づいている。

戦闘は休みなく続き、やむ気配はない。


「投石機、前へ!」


 じわじわ近づいてくる地上の魔物に対し、ボルスは近距離攻撃に切り替える。

ただの投石ではなく、油樽を投げる。

そこへ火矢を撃ち込むのだ。


 そろそろ魔物の先頭は、最初の堀にやってくる。

蛇のような、羽のはえた不気味な紫の巨体が、町をうねって進むのが見える。


「放て!」


 第一城壁から、堀を越えて次々に油樽が投げられる。

あまり飛ばなかったものは堀に落ち、堀にも油がたまる。

そこへ魔物が殺到する。


 すると今度は城壁からバラバラと火矢が放たれる。


 辺りは一瞬にして火の海となった。

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