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魔帝  作者: 松本 力
月光
162/192

月光 4

 黎明、魔物の軍勢は予定よりやや早く、ボルネット城近傍に到着した。

すぐに周囲を確認し、結果城攻めの拠点を、城の南にある小高い丘陵に定めた。


「ここしかあるまい。他から攻める奇策は、あまり価値もなかろう。

 力押しで十分だ」


 バルザムは、主力を最前衛に配し、空から攻める部隊を中央、衛は前衛の交代として待機させる陣容にした。

昼夜を隔てず断続的に攻め、より消耗を強いるつもりだ。


 夜が明け始め、粉雪がしんしんと降る。

風はなく、空は暗い。

丘の上から眺めるボルネット城は霞んでいる。


「ザーグ砦でさえ落ちるのだ。

 この城も落とせる」


 バルザムは巨大な床几から身を起こし、魔物の群れの最前列で、血錆の残る戦斧を高々と掲げた。


「者共、行くぞ!」


 黒々とした魔物の軍勢が、丘をマグマのように下り、あるいは明るくなった空に散らばる。

それはまさに魔界の侵略そのものだった。

魔物の群れはそれ自体ひとつの生き物のようにうごめき、ルビアの雪原をその触手で汚した。


 その様子を城の展望台から遥かに見ながら、ボルスは鼻息を荒々しく鳴らし、鬼神のような形相でいた。


「前面防衛に当たる全部隊、砲撃用意!

 上空防衛に当たる全部隊、大弩用意!」


  ボルスの指令は、銅鑼と太鼓で速やかに城中に伝えられる。

城壁には火砲がずらりと並び、点火を待つ。

城のあらゆる陸屋根には、大型の弩弓を揃えた部隊が、矢の装填を終える。


「俺は、地獄行きか」


 ボルスは思わず呟く。

火砲の射程は、城下の中心街をわずかに越える程度である。

つまり、もっとも激しい砲撃は、町に向けて行われる。


 そこにはまだ、動けずに残された人々がいる。


  魔物に喰われるのか、砲撃で焼かれるのか。


「国の未来のために死ね、殺せ、か」


 ボルスは両拳を握りしめ、やがて血が流れ出た。


 だがそのギョロりとした眼光は、殺到する魔物の軍勢からいささかも逸れない。


 黒々とした魔物の軍勢が、純白の雪原を侵食し、粉雪の舞う朝の空を侵食する。


 射程に入る。


「撃てぃ!」


 百を越える砲台から、一斉に砲撃が始まる。

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