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魔帝  作者: 松本 力
月光
161/192

月光 3

 例の黒い円というのは、今のところこちらに現れる気配がない。

もしかすると、一度出現すると移動はしないのかも知れない。

そうすると、敵に突然援軍が現れることはなかろう。

場内に兵三万、敵はおよそ千。

魔物一体あたりの戦力を考えれば、籠城すればある程度持ちこたえられる。


「全軍に伝達せよ。

 必ず勝てる。

 よって市民を精神的な部分で十分補助するように」


 ボルスは近くに控えていた伝令にそう命じた。


 夜になって、ボルスの元へ伝令が入る。


「敵勢力、進行してきます。

 ハンブールの丘まで、恐らく黎明には到着します」


「うむ、ご苦労。

 篝火を絶やさず、最上級の臨戦態勢を維持するよう、各部隊長に伝えてくれ」


 伝令が走り去るのを腕組みで見送りながら、ボルスはガイルの安否を気にする。


「あの方の不在は、いささか…」


 彼は唸った。


 魔物の軍勢は、方々で奇声を上げながら、まっしぐらにボルネット城を目指す。

率いるのは炭色の巨大な鎧人形。

その魂は、大国ホルツザムにその人ありと称えられた歴戦の英雄バルザムである。


 既に全軍整然と統制され、士気も極めて高い。

五十年あまり、ひたすら戦場にその身を置き、数えきれない戦績を挙げてきた英雄の手腕は、魔物相手でも存分に発揮されていた。


 行軍は速い。

予定より少し早く、未明のうちにボルネット近郊に着くだろう。

到着して陣を張れば、即座に城攻めに入るつもりだった。


「ガイルがいない城など、ものの数ではない」


 バルザムはそう踏んでいた。

今までの軍人人生で、彼を苦しめる人間はそうそういなかった。

せいぜい一国に一人だ。

ガイル程の将は、めったにいない。

ガイルは今、恐らくまだボルネットに戻っていない。

あるいはもう、吹雪の中で死んだかもしれない。

であれば城は雑兵の集まりだ。


「勝てる」


 バルザムは哄笑した。


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