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魔帝  作者: 松本 力
月光
160/192

月光 2

「そうか!

 なるほど、やはり君は優秀だなぁ、さすが大隊長を任せられるだけの男だ!

 わしなどは、思い付きもしなかった。

 よし、すまんが早速、君の案の準備を頼むよ。

 あぁそうだ、君の部隊を城の陸屋根に配備しよう。

 手薄で困っていたんだ。

 きっと君の部隊が今回の防衛の要になる。

 ちょっと大変だが、このとおり、よろしく頼むよ」


 ボルスは禿頭をぺこりと下げた。

とても天下の名城を守る主将のする事ではない。

逆に部下の大隊長が恐縮してしまった。


 彼自身気づいていないが、この一見頼りなさそうな振る舞いこそが、彼の強さだった。

自分に自信がない故に、有能な人間にちょっとしたことで心酔して任せてしまう。

任された方は、全力で遂行する。

しかも彼自身が的確な方針を持って、それに従ったアイデアを求めるので、全体として妙な方向には進まない。


「吹雪には、そう強くない」


 ボルスは魔物の軍勢について、そう感じていた。

北限の軍であるルビア軍にとって、これは幸運だった。


「だまされてはならん。強引なようで、案外慎重だ」


 魔物の指揮官について、ボルスはこう評価していた。

吹雪に弱いのはそうだが、本当に弱いというよりも、自分が雪の中の戦いを知らない故に、安全策を採っている。

よって、勝てると見れば雪は関係ないだろう。


 ガイルからの一報から四日が経過した。

駐屯軍のうち、第四部隊以降が順次城に入ってくる。

既に近隣の住民も収容しており、城内は普段より人がかなり多い。しかし今のところ大きな混乱はない。

国王ハーレス五世自らが城内を積極的に歩き、避難者達を慰問しているのも大きい。


 ボルスの懸念は、いまだ安否の知れないガイルと、第一から第三までの部隊員の状況だった。

既に数十名が無事城に入ったが、まだまだ足りない。

ルビア軍の最精鋭であり、ましてや仲間である。

それ以前に、銘々家族もいるであろう人間である。

ボルスはそれを思うと、自ら捜索に乗り出したかった。

しかし、彼にはボルネットにいる百万の人々を守る要である。

実に歯痒かった。


 昨夜までは吹雪がひどかったが、今は小降りである。

昼になれば明るさも増し、視界もある程度開けた。

偵察によれば、魔物の軍勢はもう間もなく視界に入ってくるはずだった。

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