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魔帝  作者: 松本 力
月光
159/192

月光 1

 ルビアの首都ボルネットは、北限の都市である。

人口はおよそ百万人。

北の大国ルビア最大の都市である。

主要産業は鉄鋼と小麦。

特に鉄鋼は、豊富な生産量を誇る鉄鉱石の鉱山が点在し、ルビア軍の強力な軍事力を支えている。

町の中央をルース川が流れ、そのほとりにボルネット城がそびえる。

 ボルネット城は、北、東、西をルース川本流と支流に守られ、南は三重の城壁と、それぞれの前の堀に守られている。

城の少し南へ離れたところに小高い丘があり、そこから城を眺めると、独特な地勢に佇む姿が美しい。

南側から攻めるのを基本とするが、この国には強力な火砲の技術があり、攻め手を阻む。

世界屈指の難攻不落として、バルダのザーグ砦と並ぶ名城である。


 守将はボルス。

ルビア軍総帥ガイルから絶大な信頼を受ける、城塞防衛の達人である。


「空だ」


 ずんぐりした禿頭の小男である。

ガイルより少し上の四十九歳。

愛くるしい丸く大きな目が面白い。

口髭を蓄えていて、威厳がありそうでなさそうな、愛嬌のある男だった。


「あのー、その、あれだよほら、弓矢と火砲を、がっとこう、上に向けて打ちたいんだが、どうかね、駄目かね」


 軍の実質第二の権限を持つ男は、いつもこんな調子で、どこかおどおどしている。

そのくせ戦闘が始まると、まさに守護神の働きをする。

若い頃はいつも、戦場にいるときのように豪放な男だったらしいが、出世路線から外れて長く辺境守備にいる間に、どこか自分の能力や考えを疑う癖がついてしまったのだ。

また彼は出世とか派閥とか、あるいは配置転換の要請など、そういう「政治」ができない。

国境防衛で卓越した実績を挙げながら、華やかなキャリアとは無縁だった。

ようやく辺境から中央へ帰ってこられたのは五年前、ガイルが軍総帥に就任してからのことである。


「そうですね、落ちてくる矢に備えて、盾を持たせれば問題ないかと。

 小型の物でよろしいでしょう。

 強弩に油袋をつなげて敵を焼き落とすのも良いかもしれません」


 そばにいた守備隊の大隊長がそう返すと、ボルスは目をぎょろりとむいた。

魔人の形相だ。

大隊長は罵倒されるのかと縮み上がる。

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