北の竜 12
「生憎お前さんは死なないのだよぅふふへへ。
死ぬんだったら、こやつやバルザムと同様に魂を採取するのだがねぇぃひひゃひゃ」
ガイルは闇をひたすら睨みつけていたが、ふと闇が言った言葉が気になった。
「バルザムだと?」
「そぉうさ、ホルツザムの老いぼれ将軍バルザム閣下様さぁひゃひゃひゃ。
今はわしが作った失敗作の鎧人形になって、随分ご満悦だがねぇへへひひ」
ガイルは目を見開いた。
一つの理性は「そんな馬鹿な」と叫ぶ。
しかし別な理性が「あり得る」と納得する。
噂に聞く強引な攻め、そして優れた統率力。
基本はおさえているものの、特に戦術が際立って優れているわけではない。
しかし、当初バラバラだった魔物どもを短時間でまとめ上げる手腕は、明らかに非凡だった。
この特徴は、確かに先日死去したホルツザムのバルザム将軍と一致する。
「ガイル殿、今回の攻撃は世界に対する警告なのです」
穏やかな声で、杖が言う。
それ以上は、杖は何も言わない。
闇の化け物はその言葉を特に気にした様子もない。
「さて、お前さんはあの城を守れるのかのぅひひひゃは」
すると、闇の後ろに紫にぎらぎら光る裂け目が現れた。
闇はおぞましい笑い声を残し、その中に吸い込まれた。
跡には相変わらずの吹雪だけが残った。