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魔帝  作者: 松本 力
北の竜
154/192

北の竜 9

 だが、本当にトルキスタ聖教がこの化け物どもと結託しているのならば、わざわざ途方もない資金をかけて世界中に狼煙台を作る必要はないだろう。

あらかじめ日時と場所を示し合わせ、同時に行動すればいい。

よって直接の関わりはないと推測される。


 しかしそれでは狙いがわからない。


「あの得体の知れない若造が、そんな善人には思えん」


 あるいは「思いたくない」のかも知れなかった。

歴戦の英雄であるガイルでさえ、トルキスタの若造は初めて出会う人種だった。

ガイルは理解できない存在が受け入れにくい質だった。

したがってあの若造も、心底受け入れる気になれなかった。


 やがて遠く城の方で、赤く煌めく狼煙玉が打ち上げられた。


 黎明、数日ぶりに雪が舞い始め、随分冷える中、魔物の軍勢が再び動き出した。


 陣形は最初と同じ長方形の突撃型、今度は右翼を狙ってくる。

受け手のルビア軍は前回とは逆に左へ交わしつつ、側面攻撃に入る。


 だが今回は、その動きを予想していたように、魔物たちは綺麗に向きを変え、的確に応戦する。

指揮が十分に行き渡っているようだ。


「やはりな。

 当然だ」


 ガイルはじっくりとうなずき、右手の剣を振り上げる。


「中央に結集! 突撃準備!」

 左右に長く展開していた陣形が、速やかに密集陣形へと変わる。


「敵右翼へ向け、突撃ぃ!」


 烈火のごとき怒号が冷たい原野を貫いた。

ルビア軍は魔物の群に突撃、一点集中攻撃により、魔物の群れを引き裂いた。

分断に成功すると、続けて、


「右に一斉転回! 敵右翼を潰せ!」


と号令が飛ぶ。

打楽器がやかましく打ち鳴らされ、それに従ってルビア軍が機敏に動く。

分断されて小さな集団となった魔物の右翼は、すりつぶすように減っていった。

そのままルビア軍は魔物の死体を踏み潰し、最初に陣を張っていた辺りに戻る。


 その時であった。


 空を覆う黒い巨大な円が赤く禍々しく揺らめき、ばらばらと何かが降ってきた。


 それは、実に不吉で奇怪で凶悪な、多種多様な化け物たちだった。

中には伝説に出てくるような翼竜なども混じっている。

今戦場にいる集団よりも、あるいは強力かも知れない。

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