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魔帝  作者: 松本 力
北の竜
153/192

北の竜 8

 ガイルは間髪入れず指揮を飛ばす。


「中央後退! 左右は挟撃準備!」


 また打楽器が次々に打ち鳴らされる。

すると速やかに中央の部隊が後退を始める。

それを見て取ると、魔物の群れがそれを追いかけようとした。


 だが止まり、逆に魔物達もするすると下がってしまう。


「ぬぅ、やはりそう甘くはない」


 ガイルは思わず膝を叩いた。


「あの鎧、戦をよく知っている」


 ガイルは一旦兵を整理し、守備の体制に入ることにした。

魔物の群も図ったように距離を取り始め、戦闘前の位置へ戻っていく。

戦闘は仕切り直しとなった。


 翌日は互いににらみ合いの状況が続き、夜になってもその状況は変化ない。

ルビア軍からわざわざ仕掛けることもなく、魔物達はどうも大人しい。


 ガイルは、天を覆う漆黒の円が気がかりで仕方ない。


 夜半過ぎ、城から一つの伝令

が届く。


 それは、一部住人を覗く首都近隣の市民が、城内および市外への避難を始めたというものだった。

動けない人々や家を捨てきれない人々は、それぞれの家に残ることになる。

首都近隣で目立った混乱はなく、ガイルや政府の指示に素直に従っているようだ。


「避難の一定の完了は、本日夕刻から夜半頃と見込まれます」


 それを聞くと、ガイルはわずかに目を臥せたあと、相変わらずの険しい顔で、


「了解。

 ご苦労だった」


と返した。


 伝令が敬礼をして機敏に立ち去ろうとすると、ガイルはそれを呼び止めた。


「城に伝えてくれ。

 トルキスタ聖教の狼煙を、ただちに上げるようにと」


 ガイルの脳裏に、トルキスタの若造の顔が浮かんだ。

高慢で自信家の、にやけた金髪男である。

あの若造とはなるべく関わり合いになりたくなかったが、期せずしてそこに追い込まれた。


 あの若造が、狼煙が、危険かどうかは賭けだった。

もし今回の魔物達の襲撃が、あの若造の差し金だとすれば、実に危険である。

今思えば二年前の国際会議であの若造は、あたかも今回の襲撃を予測していたかのような振る舞いを見せていた。

本当に憂慮しての事なのか、それとも遠大な世界征服の戦略構想だったのか。

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