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魔帝  作者: 松本 力
北の竜
152/192

北の竜 7

 魔物の群れが進撃を開始した。


 平坦な雪原を、あるものは走り、あるものは空を飛び、遙かに待ち受ける篝火の帯へ進んだ。

ルビア軍の広い展開とは対照的に、密集隊形を組み、突破に重点を置く。


「敵の右方向へやや方位を逸らすぞ!」


 鎧人形は、広く展開するルビア軍の向かって右翼へ軌道を向けた。

バランスを崩すことで、より突破をしやすくする狙いだった。


 迎え撃つガイル。


「端へ振ったか。

 ある程度正しい選択だ」


 月明かりに浮かび上がる、禍々しい敵影を見据えながら、彼はまだ動かなかった。

自軍は張り裂けるような緊張感と恐怖に耐え、彼の采配を待っている。

誰一人、まんじりとも動かない。


 ガイルも、怖かった。

かつて遭遇したことのない、得体の知れない敵との戦いである。

ましてや、もっとも難しい退却戦を前提としている。

しかし彼は、いつもの戦場と同じく険しい表情を全く動かさず、刃のような気迫を放ち、自陣前方の篝火のない場所で、馬上凛然と構えている。


 ガイルは敵方と自陣との距離を見極め、ある時点で剣を抜き、右方向を指し示した。

 ルビア軍は、篝火はそのままに、静かに右方向、すなわち敵軍の突撃を避ける方向へ移動し始めた。

陣形は雪原の縁を滑るように、敵側面へ回り込む。

魔物の群は変わらず、空になった陣の跡に向かい、やがて動きがわずかに鈍る。


 ガイルはそれを見逃さない。


「押せぃ!」


 右手の段平を敵方へするどく差し、号を飛ばす。

ルビア軍は魔物の群れの側面から、取り囲むように襲いかかった。

 魔物の群は、わずかに反転が遅れ、守勢となる。

十分に組織化されたルビア軍は、勇敢で実に強い。

一気に崩れるかと思われた。


 しかし、鎧人形がそれを食い止める。


 巨大な戦斧が激戦地に迫ると、ルビア兵が血の竜巻になる。

わずかの間にルビア軍は陣形を突き崩され、その間に魔物達が息を吹き返す。


「強い」


 ガイルは唸る。

しかし彼は怯まず、剣を左右に振った。

「中央前衛は左右に分離しつつ後退! 後衛前へ!」


 合図となる銅鑼と太鼓が、けたたましく打ち鳴らされる。

ルビア軍はそれに従い、多少の混乱はあったがある程度順調に移動を行った。

後衛が魔物の群に突入すると、再びルビア軍が若干優位となる。

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