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魔帝  作者: 松本 力
北の竜
148/192

北の竜 3

 しかししばらくすると、少し離れた場所から整然と統制のとれた部隊がやってきた。

人々を順次保護し、魔物にも数十人単位で個別に撃退し始めた。

その手並みはきわめて鮮やかで、また兵達もよく訓練されていた。

徐々に魔物達は散り散りにされ、順に倒されていく。

空を飛ぶものも矢で落とされた。


 鎧人形は理解した。


「化け物ども、一旦集結せよ!

 あの部隊は将軍ガイルが直々に率いている!

 名将と言われる者を侮るな、痛い目を見るぞ!」


 しばらく魔物達は、鎧人形の声を無視していたが、しかし人間達が意外な抵抗をし、徐々に劣勢に追いやられる。


「馬鹿め、所詮は畜生か」


 鎧人形は、数十人に取り囲まれ、ばたばた暴れるだけの巨大な双頭の狼のところへ、地響きをたてて近寄り、斧を振るった。

一撃で二十人ぐらいの兵士が吹き飛ぶ。


「退かぬか、愚か者!」


 鎧人形は猛烈に吠え、後方を指差した。

助けられた魔物は、その怒気におののき、ほうほうの体で引き下がった。


 他の場所でも、次々に魔物達が囲まれている。

鎧人形はそれらを順に助け、凄まじい迫力で後方に下がらせた。


 その様子を遠くから馬上にて見ているのは、真っ赤な鎧と純白のマントに身を包んだ、将軍ガイルである。


「あの鎧の化け物、ただ者ではない」


 誰であれこの事態を予測できるはずもない。

だというのに彼は、予測していた事態のように冷静に、数千の部隊を整然と指揮していた。


 彼に奇襲が効かないことは有名だった。

彼の軍事行動は常に緻密に考え抜かれ、ミスが少なく、攻めは雷撃のごとくであった。

今回の異常な事態についても、この上なく的確な対処をしている。

普段からいかに準備をしているかがうかがわれた。


「フラグヌイ、例の狼煙を上げる用意を進めよ」


 ガイルは副官の一人にそう命じた。

副官はすぐに馬を走らせた。


「恐らくまだ、降ってくる」


 彼は天を覆ったままの黒い円を、険しい顔でじっと見た。


 魔物達は、徐々に鎧人形の統率に従うようになっていく。

統率がとれた兵団は強い。

それは今、ガイルがまさに示したことである。

あの鎧の化け物が何者かはわからないが、かつて遭遇した敵将の中でも、指折り数えられるぐらいの優れた者ではないかと感じられた。

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