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魔帝  作者: 松本 力
北の竜
147/192

北の竜 2

 その五日前。


 北方の大国ルビアの首都ボルネット近郊で、それは起こった。


 ルビア軍およそ二万が常駐する、訓練所を兼ねた宿舎エリアの近くであった。

季節は真冬。

北方の国であるルビアは、地面が凍てつき、雪が毎日に様に降る。

が、珍しくこの日は、よく晴れていた。


 そのきれいな青い空に突如、赤黒く渦巻く円が現れた。

円は見る間に大きくなり、太陽を隠す。

兵士達や民衆はそれぞれに天を指差し、うろたえる。


 やがて円の拡大が終わると、今度はそこからバラバラと、何かが降ってきた。


 それは多種多様で、おぞましく、極めて邪悪な化け物だった。

巨大なものも、小さなものもいた。

ただ一つわかるのは、それはこの世の物ではないということだった。


 その中に一体、他の化け物とは少し違う、石でできた巨大で武骨な鎧人形がいた。

全身炭色で、巨大な斧を両手で持っており、不吉な気を発散している。


 その額には、赤黒く渦巻く宝玉が、禍々しく輝いている。


「化け者共、踏み潰せぃ!」


 地を逃げまどう人々の脳に直接、野太い壮年の声がとどろく。

鎧人形が号を発したのだ。


 その刹那の後には、阿鼻叫喚の光景が始まった。


 コウモリの羽を持つ大きな狐が、走り逃げる女に飛んで近づき、頭を胴体から咬みちぎった。

狐は女の頭をバリバリ食べた後、小馬鹿にしたように笑って次の獲物に向かった。


 巨大な毛むくじゃらの目玉は、ふわふわと漂った後、兵士の前に舞い降りた。

途端、兵士は石像になってしまった。

しばらくすると石になった兵士は再び動き始め、近くにいた兵士を串刺しにした。

次々に仲間の兵を斬り殺す。


 タキシード姿の、紫の肌をした若い紳士もいた。

彼が指を鳴らすと、十人ぐらいの頭がスイカのように弾け飛んだ。

彼は辺りに飛び散った脳を拾い上げ、


「シェフに言ってソテーにしようか」


と、一人納得していた。


 そして、赤い宝玉が輝く石の鎧騎士。


「これが北の竜ガイルの兵士か、弱兵よのう!」


 鎧人形はわめき、戦斧を凪いだ。

近くにいた兵士十人あまりが巨大な刃の餌食になった。

鎧人形は哄笑し、散り散りに逃げる兵を追い、踏み潰した。

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