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魔帝  作者: 松本 力
141/192

槍 17

 ゴートはローブに着いていくことにした。


 若干名の護衛を伴い、二人は教会の裏手へ回った。

あまり人気のない場所である。


 そこには、漆黒の巨馬が佇んでいた。


 鋼でできたその美しい雄姿に、ゴートらは息をのんだ。

また軍人である彼らは、即座にその兵器としての威力を理解した。


「この巨馬は、魔導師マイクラ・シテアにより作られ、ある人の魂が込められ、その人の意思により動く、魔法の戦車です。

 誰だと思います?」


 ローブは悪戯っぽい笑みを浮かべた。


 巨馬はがしゃりと動いた。

眼孔と、額の宝玉が、やけに禍々しく輝いた。

ゴートらは驚いて後ずさった。


「彼は一度戦場で死にました。

 しかしマイクラ・シテアの魔導により、この姿で蘇りました」


「馬鹿な」


とゴートは吐き捨てたが、しかし目の前で起こる事実が、あまりにも現実感が強すぎて、あるいは紛れもなく現実であり、否定しきれなかった。


「ゴート殿、ホルツザムとバルダで行われた、二度のザーグ砦攻防戦を、ご存知ですか?」


 ローブの問いに、ゴートは意外な顔で頷いた。


「無論だ。

 一度目はドバイル将軍の奇略にバルザム将軍が翻弄されたが、先日行われた二度目は、ドバイル将軍が死んで不在の砦が落ちた。

 特に先方突撃隊の決死の渡河が、大きかったと聞いている」


「だそうだが、その様子は実際、どうだった?」


 ローブは巨馬に問いかけた。


 巨馬はしばらく黙ったままだった。

が、


「頼むよ、君が誰かを理解してもらわねば、意味がない」


と、ローブににこりと笑われると、渋々巨馬は語り始めた。


 ゴートらは、直接頭の中に響く声に多少面食らったが、その歯切れが良く精悍で美しい声に、すぐ違和感を意識しなくなった。


「そうですね、まさに死を覚悟した上での突撃でした。

 私は前夜、バルザム閣下からその作戦を拝聴したとき、死を予感しました。

 実際渡河の際、川は馬の腹が浸かる程度には深かったでしょうか。

 私も部下達も、随分難渋しましたし、矢よけの盾を構えていても、股に矢が刺さりました。

 渡河できたのは、単に運が良かったと言えるでしょう。

 その後、まもなく城門は破られ、およそ勝負は決まりました。

 ですが、結局私と部下達は、バルダ守備軍総帥のキース殿を捜索中、砦の司令塔で、シ・ルシオンに斬られました」

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