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魔帝  作者: 松本 力
138/192

槍 14

 ローブは恐縮した態度で進み、


「失礼いたします」


と断って、腰をかけた。


「君の意図を聞こう」


「ありがとうございます」


 再びローブは頭を下げ、しばらく両手の五指を合わせ、考えた後で、おもむろに喋り始めた。


「そもそもの発端は、バザ大聖堂で起こった、ご存じでありましょう、二一年前の惨劇です。

 先ほど会議の場でも申し上げた通り、あの事件をたった一人で起こした、魔導師マイクラ・シテア。

 この者はまだ生きており、各地で活動しております。

 その目指すもの。

 それは、ゴート殿の国ベイシュラで、ウラガヌの嵐と伝えられている、千年前の騒乱です」


 ゴートはそれを聞いた途端、ぎょろりと目を光らせた。


「トルキスタ聖教および当時のこの大陸は、その争乱というか、災禍の舞台であったため、資料や伝承も数多く残されています。

 トルキスタ聖教では、ブサナベンの災禍と言われています。

 荒唐無稽な宗教家の戯れ言と捉えていただいても構いませんが、千年前、魔界との契約により力を得た魔導師ブサナベンが、世界を破壊せんと引き起こした災厄。

 結果的にトルキスタの聖者と言われる三人の英雄により、事態は収束したと言われていますが」


 ローブはしばらくうつむき、言葉を探した。


「そうですね、まずは例の、バザ大聖堂での事件の真相を申し上げましょう」


 これを聞くとゴートは、ぎょろ目をさらに見開いて、身を乗り出した。


「ほう」


 ローブは少しだけ右を向き、両手の五指を付けたり離したりしながら、ゆっくりと話し始めた。


「千年前の騒乱が一通りの収束を見た頃、大賢者ソルドは、バザ大聖堂の地下に、ブサナベンから奪った魔界との契約書のようなものと、自らの手による解説書を封じました。

 マイクラ・シテアがバザ大聖堂を襲ったのは、まさにその契約書を奪うためでした。

 その後の大虐殺は、ただの遊び。

 マイクラ・シテアの自己顕示欲だったのではないかと、私は想像しています。

 しかし、この事件により、あれほどの惨劇をたった一人で起こせた人間が、より強力な力を持つに至ったのです。

 で、封印の中にあったその他の書は、運良くというか、何がしかの罠かはわかりませんが、残りました。

 私はその数百に上る書を解析し、これから起こるであろう事態への準備を、かれこれ二十年にわたり行っています」

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