槍 12
彼の発言で、何人かの参加者は、安堵の顔になった。
状況が理解できていない者もいるし、まだ不信感をあらわにしている者も少なくない。
「彼は、当方の傭兵であります。
普段は私と共に、各地で発生する奇怪な事件の対処に当たっています。
有事の際、彼は、各国へ救援に向かいます」
「それをどうやって信用しろと?
そこにいるシ・ルシオンという男は、千の兵よりも強く、戦場における意味合いは万の兵に匹敵する。
トルキスタ教会がなぜあの男を雇っているのか、あるいは雇えているのかはわからぬが、少なくとも敵に回せば危険であることは、軍人なら誰でもわかる」
ローブは応えに窮した。
結局議論は、ほとんど歩み寄っておらず、平行線のままなのだ。
ローブはしばらく檀の机に目を落とし、天井を見上げ、しばらく呼吸を整えたあと、ようやく言葉を見つけた。
「それほどの力でなければ、救援しても価値が、その、救援としての意味ある成果を、提供できなくないですか?
ましてや」
ローブはガイルをじっと見据えた。
「バーガリヴの災禍が再現したら、どうします?」
この言葉を聞いた刹那、明らかにガイルは驚きの表情を浮かべた。
そこで間髪入れず、ローブは続けた。
「皆様、本日は一旦散会とさせてください」
ガイルは不意打ちを食らった様子で、それ以上言葉を出せなかった。
会議の主要メンバーの一人である彼が黙ると、他は大人しかった。
この日の会議は散会となった。
「悪いな、嫌な思いをさせた」
参加者が全て引き上げた後、まだ残っていた巨人にローブは声をかけた。
「取るに足らんことだ」
「そう言ってくれると俺は助かるが」
ローブは苦い顔だった。