表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔帝  作者: 松本 力
136/192

槍 12

 彼の発言で、何人かの参加者は、安堵の顔になった。

状況が理解できていない者もいるし、まだ不信感をあらわにしている者も少なくない。


「彼は、当方の傭兵であります。

 普段は私と共に、各地で発生する奇怪な事件の対処に当たっています。

 有事の際、彼は、各国へ救援に向かいます」


「それをどうやって信用しろと?

 そこにいるシ・ルシオンという男は、千の兵よりも強く、戦場における意味合いは万の兵に匹敵する。

 トルキスタ教会がなぜあの男を雇っているのか、あるいは雇えているのかはわからぬが、少なくとも敵に回せば危険であることは、軍人なら誰でもわかる」


 ローブは応えに窮した。

結局議論は、ほとんど歩み寄っておらず、平行線のままなのだ。


 ローブはしばらく檀の机に目を落とし、天井を見上げ、しばらく呼吸を整えたあと、ようやく言葉を見つけた。


「それほどの力でなければ、救援しても価値が、その、救援としての意味ある成果を、提供できなくないですか?

 ましてや」


 ローブはガイルをじっと見据えた。


「バーガリヴの災禍が再現したら、どうします?」


 この言葉を聞いた刹那、明らかにガイルは驚きの表情を浮かべた。


 そこで間髪入れず、ローブは続けた。


「皆様、本日は一旦散会とさせてください」


 ガイルは不意打ちを食らった様子で、それ以上言葉を出せなかった。

会議の主要メンバーの一人である彼が黙ると、他は大人しかった。


 この日の会議は散会となった。


「悪いな、嫌な思いをさせた」


 参加者が全て引き上げた後、まだ残っていた巨人にローブは声をかけた。


「取るに足らんことだ」


「そう言ってくれると俺は助かるが」


 ローブは苦い顔だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ