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魔帝  作者: 松本 力
氷の女神
13/192

氷の女神 2

『でも、頼まなければ良かった。

あなたの手が、ひどいことに』


「構わぬ」


 それ以上シ・ルシオンは何も言わなかった。


 女の声も、戸惑ったまま、しばらく途絶えた。


 吹雪はひどい。


『あなたはいつもそう。

いつも犠牲になりすぎるわ。

そのくせ、また沢山人を殺した』


「俺は戦士だ」


『あんなに殺さなくてもいいじゃありませんか』


「俺は戦場では、皆殺しすることにしてる」


 責めても無駄なのを悟ったのか、女は哀しげな溜息をついた。


『何もかも無茶な人』


 心に響く声が、涙に震える様だった。


「そんなことより、魔馬車は?」


 シ・ルシオンは、女の泣き声にも全く動じない。

無感動と言うより、鉄の意思が彼をそうさせている様だ。

氷の中の女にも、それはわかっていた。

わかってはいても、女は諫めたくなるらしかった。


『マルゴー遺跡にいます。

 途方に暮れて』


「わかった」


『駄目よ』


 すぐに立ち去ろうとする戦士を、女は止めた。


『今行けば、戦いになるわ。

 もう少し落ち着いてからの方が良くないかしら』


「戦って朽ちるのなら、互いにそれまでだ」


 そう言い捨てて、シ・ルシオンは氷の中の女に背を向けた。


「また様子を見ていてくれ」


 一言そう残して、彼は立ち去った。

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