表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔帝  作者: 松本 力
120/192

杖 8

「わしはやがてこの世を支配し、破壊する者じゃ。

 貴様のごとき虫けらはわしにひれ伏して当然。

 どう思うかね、ご令嬢」


 すると、突然なにかボールの様な物がファリアヌスの側に転がった。

何かと思って見ると、それは女の首、しかも先ほど自分が殺したバンスファルト伯爵令嬢のそれだった。


 令嬢の首は、ファリアヌスを凄まじい怒りに満ちた形相で睨み付けた。


「このゲス、卑怯者、臆病者、お前が死ねば良かったのに!

 その上、この世界の王たるマイクラ・シテア様に、何という無礼極まりない態度なの!」


 伯爵令嬢の首は、ファリアヌスに緑色の唾を吐きつけた。

それはファリアヌスの頬に当たる。

するとそこが焼けて、煙が出た。


「あつい、あつい!」


 ファリアヌスは頬を擦って何とかしようとした。

すると皮膚がずるりと剥がれた。


「いやだぁあぁ」


「無様でいい気味よ、いい気味いい気味いぃぃ」


 首はゲラゲラ笑って、そして灯りが消えるように忽然と消えた。


「で、どうしてほしいのかね、ファリアヌス子爵閣下」


 地鳴りのような声が再び頭蓋を揺さぶる。

「わわわわかった、わたわた私を、私に、オデュセウスを殺す力を、お与えくださいませぇ!」


 ファリアヌスは懇願した。


 闇の空間全体が、禍々しくにたりと微笑んだ。


「よかろう」


 再びファリアヌスの目の前で、紅い宝玉がぎらりと燃え上がる。

その渦巻く光はじわりと広がり、やがてファリアヌスの視界を全て覆った。

と同時に彼の胸に焼き鏝のような痛みが走る。


「熱い痛い痛いやめてやめてああぁあぁ」


 彼は狂わんばかりに叫ぶ。

しかし焼き鏝はあばらを突き破り、やがて心臓に達した。


 ファリアヌスはここで意識を失い、痛みから逃れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ