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魔帝  作者: 松本 力
113/192

杖 1

「まさかわしの魔馬車が、あの憎々しい魔封じめと手を組むことになろうとは」


 蝋燭二本だけの暗く狭い、実に雑然とした窓のない部屋に、マイクラ・シテアはいた。

彼は机の傍らに立て掛けてある杖に語りかけていた。


「魔封じとは何者ですか」


「わしの邪魔ばかりする、筋肉馬鹿だ。

 シ・ルシオンとかいうらしい」


「それなら私も知っています。

 私より上の世代の軍人なら、誰でもその名は知っています」


 杖がそう応えると、マイクラ・シテアは喉の奥をガラガラいわせた。

苛々している。


「ドバイルよ、貴様は大陸随一とも言われた調略家であろう。

 あの忌々しい連中を始末せよ」


 杖には、ザーグ砦の守将ドバイルの魂が宿っていた。

ぎらつく紅い宝玉が埋め込んである。

杖はしばらく考え、やがて応えた。


「如何なる英雄であろうとも、いや、優れた人間であればその分、嫉妬もされましょうし、恨まれもします。

 今のような戦時であれば尚更です。

 戦時の英雄とは、より多くの人を殺す者に他なりません」


「ほう」


 引きちぎれそうなしわがれ声で相槌を打ち、魔導師は興味を示した。


「で、それでどうなる」


「彼らを恨んでいる者たちを探しましょう。

 その死を待ち、私と同じく宝玉にて魂を採取し、そして、強力ながら愚かな魔物に埋め込みます」


「おもしろい」


 マイクラ・シテアは歯のない紫色の口を引き裂いて、にたりと笑った。

喉の奥で苦しげな呼吸音がする。


「早速色々調べてみよう」


 魔導師は杖をひっつかむ。

彼の側に紫色に揺らめく裂け目が現れ、彼はその中に吸い込まれた。

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