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魔帝  作者: 松本 力
神託
111/192

神託 8

「どういうからくりかは俺にはわからんが、ともに戦おう」


 昼下がりの祝典は、長々と夕方まで続いた。


 一仕事終えたローブは、休むことなく次の仕事に取りかかる。

祝典が終わった夜には密使を各国に送り、有事の際の各国の連携について、最初の公式な打診を行った。

手配の実務は、先日ザーグ砦から連れてきたフォルタが行った。


「もうできたか、早いな。

 ちなみにお偉方の反応はどうだった?」


「概ね好評でした。

 やはり最近のマイクラ・シテアの活動に強い懸念をお持ちのようですね。

 神託の馬車殿も、それを後押ししたように思います」


「どうだかなぁ。

 どうせお前がそう言ったから、うんうん言ってただけだろうよ」


 慇懃なフォルタは、教皇庁の幹部連中の評判がいい。

未だに評判が悪いはみ出し者のローブと、よく比較される。

ローブはそれを利用して、フォルタに事務的なご用係を任せている。

フォルタは有能で、しかもただの「いい人」ではない。

ローブが誰をどの様に利用したいか、どんな駆け引きをしたいのか、ほぼ理解した上で、いい人を演じている。

若いが最高の片腕だった。


「あなたはドバイル様より、ずっと悪い」


というのが、フォルタの最近の口癖である。


 もう一つ口癖がある。


「マルタがいてくれたらなぁ」


 大抵小さな独り言だが、それが聞こえると、ローブは少し申し訳なく思う。

フォルタとマルタは、ともに認め合うパートナーであり、友人だった。

結果的にローブが引き離したのである。


「可能なら、いつかもう一度、引き合わせてやりたいな」


と思うが、今の各地の戦乱やマイクラ・シテアの脅威を考えると、自信はなかった。


 数ヶ月後、ザーグ砦やホルツザム、バルダなどに忍ばせてある間者から次々に知らせが届いた。


「ホルツザムとバルダ、休戦協定成立」


「ザーグ砦はホルツザムが領有」


 ローブは胸をなで下ろした。

とりあえず当初のもくろみ通りに事は運んでいる。

フォルタも喜んだ。


 だが、その知らせをオデュセウスに持って行くのは、勇気が必要だった。


 オデュセウスに与えられた郊外の専用施設、厩舎とでも言えそうな所に、ローブは重い気分で出掛ける。

街道に面した小さな農場の片隅に、それはできている。

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