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魔帝  作者: 松本 力
魔馬車
11/192

魔馬車 11

 オデュセウスは自分が開けた大穴から逃れようとした。

が、馬体の後ろにつながれた何かが引っ掛かった。

見ればそれは、やはり鋼の、巨人でも乗れそうなほど巨大な、戦場の馬車だった。

巨大な車輪が二つあり、これを引いてオデュセウスが軍勢を突っ切れば、どれだけの屍体が作られるかわからない。


 建物が激しい音を立てる。オデュセウスは夢中で引いた。

すると壁はより大きく破れた。

間一髪オデュセウスは逃れた。

オデュセウスが離れるとたちまち建物は地響きと共に崩れ去った。


 周りは、渓谷にある忘れ去られた、ささやかな遺跡群だった。

黄昏時で、物哀しい場所だった。

今崩れた少し大きな石造の建物を中心にして、その周りを小さな五つの建物が囲んでいる。

なにか宗教じみた場所だが、ここがどこか、オデュセウスには見当もつかなかった。


 改めて自分の身体を見回してみる。

黒塗りの鋼鉄でできている。

鍛え上げた戦場の馬に思えた。

戦車は武骨で、重々しい。


 オデュセウスは途方に暮れた。


「どうする、こんな身体で」


 色々考えを巡らせてみたが、答えの出るはずもない。


「あの時死んだはずが、何故こんなことになったのだ」


 オデュセウスはしばらくたたずんでいたが、無駄だった。


 やがて彼は、考えるのをやめた。


 周りは人里離れ忘れられた遺跡群。

ここで朽ち果てるのを待つことに決めた。

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