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魔帝  作者: 松本 力
神託
109/192

神託 6

 郊外であり、人はあまりいない場所だが、それでも人は何人か集まっていた。

ローブは馬車を停めると、声をかけた。


「悪い悪い、どいてくれ」


 ローブの法衣を見ると、人々は少し遠慮して、鉄の黒馬から少し離れ、遠巻きに様子を見る。


 ローブは、鋼の黒馬を見上げ、


「俺はローブ。

 オデュセウス、あんたの力を借りたい」


と声を張り上げた。


 それまで黒い空洞だったオデュセウスの目が、赤く光った。

彫像のようにじっとしていた馬車が、首をローブに向ける。

様子を見ていた数人が悲鳴を上げる。


「ああ、騒がなくていい、この一件は既にトルキスタ教皇庁の管理下にある」


 ローブは特にうろたえた様子もなく、むしろ穏やかに制した。

優しげに笑う彼を見て、集まった人々は安堵の顔になった。


「あぶねぇ、騒がれたら面倒だ」


 ローブは巨馬に向き直りながら、小さく呟いた。


「私はオデュセウス。

 トルキスタ教皇庁のローブ、あなたの名は、知っている」


 ローブの脳に直接声が響く。

多少の違和感はあるが、引き締まった男性らしい声で、嫌ではなかった。


「私は、シ・ルシオンにザーグ砦で斬られ、マイクラ・シテアという男のあやかしでこんな馬の姿になった。

 そしてシ・ルシオンが私をここへいざなった。

 これは、誰によって仕組まれた事なのだろう」


「さぁ」


 黒馬の問い掛けに、ローブは肩をすくめた。


「俺にもわからない」


「そうか」


 黒馬は、わずかにため息をついた。


 ローブは、オデュセウスに近寄り、芸術的に逞しく作り上げられた金属の馬体に触れた。


「そんなことより、俺には、あるいはシ・ルシオンには、あんたが必要だ。

 話せば長い。

 だが簡単に言えば、俺達はあの魔導師マイクラ・シテアを滅ぼさなければいけない。

 大賢者ソルドの遺言が、それを示している」


 オデュセウスは、何も応えない。

戸惑っているらしい。

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