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魔帝  作者: 松本 力
神託
107/192

神託 4

「すぐにとは言わん。

 また来る」


 沈黙するオデュセウスの様子を見ていたシ・ルシオンが、やがて言った。

そしてあとは何も言わず、馬車に背を向けた。


 それから数日間、オデュセウスは悩んだ。

考えたと言うよりは、悩んでいた。

仲間への裏切り、得体の知れぬ敵との戦い、そして自分の呪われた運命。

整理がなかなかつかない。


 思えば彼には、何かを相談できる相手がいなかった。

何かを共有できる相手もいない。

突撃隊の仲間たちとも、どこか一線、距離があった。

最後はいつも一人で戦場を切り抜けていた。

一人で生きているわけではないと思っていたが、しかし常にどこか、孤独だった。


「あれほどの戦士が、なぜ俺に」


 ふとそう思う。

先程の戦いで、確かに自分は、相当な速さで動けることがわかった。

マイクラ・シテアの言う「二日で大陸を横断」というのも、そう大きな間違いではないかも知れない。

あの魔導師を追うために自分が必要なら、応えてやっても良いかも知れない。


 だがなぜあの戦士は、魔導師を追うのか。


 実は自らの死は、何か巨大な力によって仕組まれたのではなかろうか。


 そこに、答えはない。


 だからこそオデュセウスは、運命的な何かを感じた。


「俺は、どうせ死んだのだ」


 彼は自嘲した。


 数日後の早朝、わずかにもやが漂う荒野の果てから、褐色の戦士がやってきた。

特に構えをとらないその姿は隙だらけのようにも見えるが、しかし全く隙がないことを知った。

同じ戦場で生きてきた人間として、それは羨ましいぐらいだった。


 シ・ルシオンは、黒い巨馬を少し見上げるぐらいの場所で足を止めた。

オデュセウスが踏み込んでも、辛うじて交わせそうな位置だ。


「答えは出たか」


 戦士はぶっきらぼうに尋ねる。


「微力を尽くそう」


 オデュセウスは穏やかに応えた。

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