103/192
ザーグ砦攻防 17
突然のことに動揺した側近が、慌てて静止する。
しかしバルザムは、激昂した。
「馬鹿め、貴様にはあの怪物が目に入らぬか!
我が軍を全滅させるつもりか!」
バルザムはわざと顔を上に向けず、指も指さず、眼だけをちらりと塔の屋上に向けた。
側近がそちらを見ようとすると、
「馬鹿め、あの怪物に気取られたらどうする!」
と、脂汗を噴き出しながら小声で叫ぶ。
「全軍、停戦じゃ!
慈悲をもって停戦せよ!
砦は陥ちた、戦ってはならぬ!
これ以上の戦いは無意味じゃ!
停戦せよ!」
バルザムは喚き散らした。
その頃にはもう、塔の頂に、巨人の姿はなかった。