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魔帝  作者: 松本 力
ザーグ砦攻防
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ザーグ砦攻防 14

 破城棍が城門を突く音が響く。


 シ・ルシオンはその地鳴りのような音を、腕組みして仁王立ちのまま、目を閉じて聞いていた。

 彼は砦の司令塔の四階にいた。


「ラッセル将軍は、敵にとってはまだ生きている存在だ。

 だから必ず、敵はこの司令塔へやってくる。

 ここで敵を待っていれば、いずれオデュセウスが現れるだろう」


 去り際ローブはそう言い残していった。

それに従いシ・ルシオンは、司令室に向かう唯一の通路に位置する四階大回廊で待った。


 戦場の施設であり、無骨で殺風景だった。

飾りと言えばランプと緋色の絨毯ぐらいで、あとは石造りである。

ゆうに十人ぐらいが並んで歩けるほどの広さだ。

おまけに天井も高く、がらんとした印象がある。


 シ・ルシオンは、その中央に佇む。

彼の視線の先には、下り階段がある。

しばらくすれば、ホルツザムの兵士たちがその階段を上って殺到するだろう。


 彼は背負っていた剣を鞘から外した。

前に動かし、床に突き立てる。


 戦場は久々だった。

魔物とはしばしば戦っている。

が、戦場の緊張感は、彼を知らず昂揚させた。


 外から、一際大きな喚声が聞こえる。

城門が破られたらしかった。

悲鳴が増え、金属のぶつかり合う音もバラバラと響いた。


 やがて塔の足下でも、戦闘が行われ始めたらしい。

どうやら形勢は一方的で、たちまち静かになる。

やがて、何十人かの集団が、塔入口の両開きの扉を破って入ってくるのがわかった。


 シ・ルシオンは待った。

棟内には二十名ほどの守備兵しかおらず、その断末魔が順に近づいてくる。

階段の下まで敵兵が駆けてくる。

登り始め、シ・ルシオンの視界に一団の兵士たちが現れた。


 兵士たちは廊下に駆け上がり、シ・ルシオンを見た瞬間、猛烈な戦慄に支配された。

足がすくみ、なぜ自分たちはこんな所へ来てしまったのかと、激しく後悔した。


「オデュセウスはいるか」

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