表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

2.決まらぬ男(ミスター・ブラック)

 醒歴1880年 九月

 阿真利火(アメリカ) 南西部 アリゾナ準州


「そんな熱烈なキスの最中に、突然吸血女(ドラキュリーナ)が苦しみ出した。男の腕の中で暴れまくり、とうとう身を離すと、ばったり倒れてそれっきり、だ。で、何が起こったのかさっぱり解らないからずっと立ちん坊だった恋人の男は、暫くしてはっ、と、ある事に気付いた。」

「その間抜けは何に一体気付いたってんだい、トミー?」

「俺知ってるぜそのオチ。そいつぁな、」

「黙ってろよジョン、俺の出番(ターン)だぜ……いいかい、その男は気付いたんだ。さっき夕飯で何食ったのか、って事をな。(やっこ)さんが食ったのは、真っ赤なワインに厚切りのステーキ、それからそいつに添えられていた、たっぷりたっぷりの大蒜だったのよ。」

 酒場(サルーン)の一角から下卑た笑いと共に、テーブルと床を叩く音が上がる。

 ここはベイツタウンの大通りに面する酒場『負け犬達の巣窟(レザボア・ドッグス)』。

 金鉱の権利者として、そこいらに居るゴロツキから一気に成り上がった男、エドワード・ベイツの名を冠して名付けられたこの鉱山街は、大き過ぎず小さ過ぎず、中庸と呼ぶに相応しい規模の街であり、その成り立ちや町並みを見ても、これぞ西部、という風体をしている。

 故にそこにある酒場もまた、これぞ西部、という有様だった。

 時は夕刻ならば、テーブルは満席、開いている場所皆無の盛況具合。片隅には、元来人間性は良い方だが、その人間がしばしば持ち合わせている悪癖で持って、蜜滴る人……片方は少々違うが……の不幸を国産の冗句で合えて堪能している鉱夫の一団が居る。彼らの隣では、出所不明のウィスキーを満たしたグラス片手に、俺は大統領になって一生裕福に暮らすだの、あの野郎ぶっ殺してやるだのと、剣呑で過激で大仰な、けれども言うだけならば無料(タダ)の世迷言を、酔った男達が口にしている。更にその横では、左手にカードの扇を握り締めた者達が、僅かな金を賭けた、けれども本人達にとっては真剣そのもののポーカーをしていた。膝の上に置かれた拳銃は、イカサマであれ何であれ、勝負を妨害するなら容赦しないという意思の表れに違いない。そうかと思えば、テーブルの上に片脚を乗せ、機械で造られているそれを大声で自慢している者も居る。荒く掘られた木の外枠を持って嵌められたその義脚は、義体大国・土壱(ドイツ)のものと比べれば嫌が応でも阿真利火製の粗悪な出来のものだと解るが、生憎か僥倖か、この街に義体職人の類は居ない為、皆物珍しがって男の脚ばかりをじろじろと眺めている。そしてカウンターの奥には、大分額の後退したマスターが、穏やかに唇を吊り上げつつグラスを拭いている。自分の店に負け犬などという名前を付ける程の過去と諧謔を持ち合わせたこの男に取っては、周囲の喧騒も緊張も、心地良い音楽の様なものらしく、その表情は涼しげだ。

 かの様に酒場の中は、合衆国の他地域の者達が見ていなくともこうに違いない、と想像するものと、殆ど遜色無い風景を示していた。粗が目立つも愉しげで騒がしい光景だ。

 そんな場を一発で沈めさせる重々しい靴音が、扉を開けて響き渡った。

 上から下まで黒一色。唯一の色は黄金に輝く、長細い双眸。

 新たに現れた客の姿に、誰もが口を閉ざし、体を止めて、眼だけを動かす。完全に自分達の世界へ入り談笑していた者達も、カードをしていた者達も含めて、全ての者が魅入られたかの様に来客へと視線を向ける。そうして彼らは小さな声で、口々に言い合い始めた。

「見ろよ、大鴉(ネバーモア)だぜ……。」

「おい嘘だろ、この街に居たのかよ。」

「知らなかったのか馬鹿な野郎だな。最近ずっと居座ってやがるのに。」

「本当か? あの化物が? こんな所に? 悪い冗談だぜっ。」

「黙れよてめぇら、命が欲しくないのか。」

「馬鹿はどっちだ。黙ってたってどうせ殺されるじゃねぇかよ。」

「だったら、もっとでかい声で話せよ、聞き辛くて仕方無ぇ。」

「そういうてめぇはどうなんだよ兄ちゃん。」

 一人一人は小さくも、一斉に上がればどうしようも無く耳についてしまうものだ。場が静寂の内に沈んでいるというのならば尚更の話である。けれども渦中の人物は、周りの囁きに何も応えず、カウンターへとやって来て座ると、

「珈琲を。」

 ただそう端的に、マスターへと告げた。店がぶっ壊れるか位しなければ決して驚いたりしない彼でも、『大鴉』と合っては話が違うらしい。僅かに片眉を上げながらマスターは頷くと、彼の為に既に用意されていたポッドからカップへ、黒々とした湯気立つ液体を注ぎ入れた。酒場で酒以外のものを飲むなどマナー違反も甚だしいのだが、誰もそれを咎めようともせずに、ただただ熱心に様子を伺うのみである。

 緊張は、彼がカップを持って口をつけ、一息入れると同時に漸く解けた。

 途端、銘々が口を開いて体を動かし、来店以前の話題へ、行動へと戻って行く。

 ただしそこには、先程までの熱が無い。時ならぬ客の出現に、客の集中は削がれてしまっていた。皆一様に、黙々と珈琲を啜っている黒尽くめの男へと目線を送り、何をしやがるつもりかと訝しがっている。反応の無いのを良い事に、さっさと失せろと呟いて憚らない者も居た。

 ここに居る者の半分程は、叩けば埃どころか鼠が落ちて着そうな連中である。空の狩人の存在に、穏やかでなくなるのも当然というものではあろう。


 だが一体誰が知ろうか。

 この場の状況に最も憂いを覚えていたのは、酒場の雰囲気を台無しにした当人、大鴉の異名で世間から恐れられている賞金稼ぎ、ケイン・ウェイトリィ自身である事を。

 彼の職業は、確かに、生死を問わず賞金首を捕らえる事を生業としているが、だからと言って今ここで労働に従事しようとは思っていないし、そこまで勤勉でもない。休養すら義務となして、あくまでも合理的に動きたがるのは土壱人位だろう。が、彼は阿真利火人である。

 そんなケインがこの店へと来た理由の一つは単純に珈琲を飲む為だった。酒を飲めぬ彼に取ってこの魅惑的な飲み物は数少ない趣向の一つなのである。

 それ以上の理由など何も無いのだが、周囲はそう見てなどくれない。半ば自分から見せている、または見せた結果とは言え、その視線は心地良いとは言い難い。

 つい先程もそうだった。

 銀行を襲撃し逃亡した一党を、死体にして連れ戻してきたケインに、街の者達は一言も掛けず、怯えた小動物の様な眼で遠くより見つめていた。

 彼らにとっての関心事は、自分達の金が詰まった麻袋の方で無く、ロープに結わえられた五つの袋と、それを引き摺っている担い手の方であるのは明々白々である。

 そしてまた、仕事の成果は嘲笑交じりの苦笑を持って迎えられた。

「行って帰って二時間と少し、か。実に鮮やかな手並みじゃないかい。雑魚に掛ける容赦も時間も無ぇ、俺が求めるのは大物だ、って事かな、大鴉。」

 秩序を護るよりも私腹を肥やす方が大事、という信念が身体にありありと表れた、肥満型の保安官(シェリフ)は、頬を緩めながら、そうケインに向けて言った。この胸のバッヂが輝いている間は、何を口にしても平気だという雰囲気を隠そうともせず。

 保安官が身元確認をしているのを待つ間……五人の内一人だけ、矢鱈と時間の掛かったのは、そいつの顔が凹んで形になっていなかったからだ……窓や扉の向こう、物陰から、ケインを見つめる無数の視線があったのは言うまでも無い事である。

 これらは、ケインにとって別に良くある扱いだった。

 ただ、良くあるからと言って、良い扱いとは限らない。

 肉と脂がたっぷり詰まった頬を震わせて、保安官が言ったネバーモアという発音が、モンスターのそれと似ていて、実際その様な意味を込めていた事を思い出し、ケインは舌打ちしつつ、カップを持とうとした。と、彼の手の中で見事な破砕音を立てながら、その取っ手が砕ける。飛び上がったマスターが早口に何か捲くし立て、新しく珈琲を注ごうとするのを彼は制しながら、今度は慎重にカップごと掴み、そっと口元へ寄せる。

 こんな事をしていては無理からぬ事であるし、身から出た錆には違いないのだけれど、ケインとしてはこの状況がどうにもやり切れなかった。

 そもそも彼は、皆が恐れる様な化物では無い。

 他の人々に比べ、体質的な異常はあるものの、それでも列記とした人間だった。

 もっと言えばこの世界、この時代に置いて、彼の様な者は別に珍しくも無かったのである。


 世界の交流の幅が飛躍的に進歩した十五醒紀。新たな地を訪れた人々の中に、その心身を奇妙に変異させる者達が現れた。彼らは、神話、伝説伝承の類の中で生きる存在に酷似した姿、外見上違いは無いが魔術めいた体質、器官と、それぞれ様々に既存の人間とは別の者へと変わって行った。それだけでなく、彼らの周辺者にも同様の現象を迎える者が現れると、この変異は梅毒と似た、しかしそれよりも遥かに早い速度を持って世界を駆け抜け、瞬く間にあらゆる国家、地域で変異者の姿が見られる様になった。

 病気なのか何なのか原因は一切不明であり、一度変異してしまうと治す方法の無い彼らは、当初宗教的、社会的弾圧を受け、多くの者が命を失うか、街や都市から逃げて行く羽目に陥った。だが数が減っても関係無く増え続ける事、基本的には通常の人間と変わらない事、啓蒙と科学の陽光が無知と迷信の暗雲を通して人民に差し向けられた事などを理由に、数醒紀も経つ頃には、彼らも受け入れられる様になり始めていた。

 人々はこの現象が大航海時代より起きた事から、未踏の場所へと行くという事に原因があると考えるも、しかし確固たる理由を設ける事が出来なかった。そこで十九醒紀初頭、風蘭守(フランス)の学者貴族エルゼアール・ジュシーは、「『何か』は解らないがしかし、『何か』原因があるに違いない」と、変異した者達を保因者(キャリアー)と名付けると、他の人々もそう呼ぶ様になった。


 その数ある保因者の一人が、ケインである。

 恐らくはこの酒場にも、それが見える形であれ見えざる形であれ、何らかの変異を経た者が少なく無い筈だ。何せ新大陸こそ、暗黒大陸と並ぶ保因者のメッカなのだから。

 その意味で、ケインのみを化物と恐れるのは大いに理不尽な事だ。体質こそ超人的だが、それは他も似たり寄ったりである。故に彼を見ている者の大半も同じ名で呼ばねばならなくなる。

もとい、理性的には受け入れられても、未だ感性的に許容しがたいのが保因者だ。大っぴらにそうだと名乗り出れば、口さがない者は負の感情を持ってその名を口にするに違いない。

 ただ彼らには、一つ決定的な違いがあった。

 それはケインが、あえて自身を恐るべき者として見せてきた事である。


 彼は飾り気の無くなったカップを握りつつ、黒い水面に映る己の姿を見る。 


 西洋人のそれとは違う作りをした面立ち。

 深淵の中にあって尚暗く、黒い髪。

 金星の如き輝きを放つ蜥蜴の眼。

 もう六十年以上前になろうか。家族どころか先祖の誰とも似ていないその容姿と人間離れした体質より、ケインは耄碌している祖母以外の家族中から気味悪がれ、生後一年、外見的には三歳の頃に荒野へと投げ捨てられた。文字通りに馬車の上から、である。

 そこから当ての無い放浪の旅が始まったのだが、不気味な金眼の浮浪児を受け入れてくれる場所は都会にも田舎にも無かった。浮浪児は十年余りで青年へと成ったが、しかし反応に大差は無く、とうとう流れ流れて未開拓の西部へとやって来た。その地でも決して好転する事の無い待遇に、ケインは身を守るべく銃を握り、それを武器に生きる事にした。

 こそこそと逃げる様に彷徨うよりも、堂々と地に脚を付けて生きよう。

 気味が悪いと恐れ戦くならば、良いだろう、その様な有様に成ってくれる。

 それでもまだ文句を垂れる間抜けには、鉛玉を腹一杯食わせてやろう。

 自棄と諦観、つまりは開き直りを持って彼は賞金稼ぎという無法(アウトロー)的職業に就いたのだ。


 天賦の才があったのだろう、ケインの手の中で銃は驚く程に一体となり、そこから放たれる弾丸によって多くの同胞を葬っていった。今まで石を投げられ、罵られて生きて来た彼にとって、それは実に愉快且つ興奮を伴うものだった。こちらが黙っているのに神経に触る言葉を吐き続ける馬鹿は決まってお尋ね者で、そいつらを生死問わず確保すれば金が貰えるというのは実に美味しい話であり、その顛末を見ていた者が、そしてその目撃者から語られた新たな者が、自分に恐怖し、誰も後ろ指を指そうとしなくなったというのもまた良い話である。

 バーゲンのセールの様な利点で、ケインは一層職務に邁進した。ただ待っているだけで無く、自ら相手を求めて彼方此方へ行って、悪党狩りを愉しんだ。

 そして今までにも増して獲物を狩り続ける彼に、何処かの、少しは教養のある誰かが、エドガー・アラン・ポーの詩を引用し、逃れられぬ冥府の使いとして彼を『大鴉』と名付ければ、皆も納得してそう呼ぶ様になり、本人もまたそれを受け入れた。自ら黒い外套を羽織、八本脚の愛馬に跨り、巨大な拳銃を握り締め、この名に相応しくあれと荒野のあらゆる所へと赴いた。


 そして現在。

 ケインの所業は、彼が望んだ通りの成果を生んだ。

 彼は今や西部の『大鴉』であり、その名を恐れぬ無法者は居ない。恐れなかったならば、そいつはもう既にこの世には存在していないのだから、当然と言えば当然の話だ。

 その代わりに、誰も彼を唯のケイン・ウェイトリィと見ようとはしないし、その名前も呼ばない。彼はケイン・ザ・ネバーモアであり、そこには絶えず『大鴉』の影が纏わりついている。ただこうやって珈琲を飲んでいる時にすら、それはケインから離れる事が無い。

ここまで来て彼は漸く、自分が道を誤った事を悟っていた。

 確かに、そう在らんとしたのは自分である。そこに喜悦を見出していたのも他ならぬ自分だ。銃把を握り、狙いを定め、引鉄を絞り、銃身から放たれた弾丸が、小五月蠅い敵の脳髄を、心臓を穿つ時、えもいわれぬ快楽を自分が覚え、続けているのは否定出来ぬ事実である。

 だが違う、違うのだ。

自分が本当に望んだ事は、真に求めた事は、こんな事では無い。もっと別の何かだ。

 その何かが何なのか、ケインにはもう思い出せない。言葉に出来ない。

もっと幼かった頃には確かに胸にあった、ある想い。

 『大鴉』であった罪業が、『大鴉』である矜持が、爪となり牙となってそれを掻き乱す。

 或いはそうする事でかろうじてケインという存在を保っているのかもしれない。己の願望が、思想が何であるかをはっきり自覚したその時、果たしてそれが絶対に得られぬものであれば、彼は『大鴉』であるしかなくなるのだから。ただもしそうだったとしても、解らぬ以上変わらない事に変わりは無く、こうして独り、珈琲を啜って慰めとする以外の方法などないのだし、そもそも簡単に得られぬからこそ、今のケインがあるのだろうが。

 しかし全く、誰が考えたのか知らないが、大鴉とは良く言ったものだ。それを最初に考え付いた者は恐らく余り深い意味を持って付けた訳ではあるまい。ただ何となく、イメージとして合っていたからだろうが、その詩の内容とケインについて照らし合わせれば、実に皮肉な名前では無いか。最早二度と(ネバーモア)、そう恋人を亡くした事を嘆く男へと発する鳴き声は、鳴いている当の本人にこそ、相応しい言葉であるのだから。

 ケインの、東洋の修行僧か何かの様な限り無く表情の無い相貌の奥に、消す事の出来ぬ苦い感情が浮かんだ。不味い珈琲を飲んだ後の様な嫌な気持ちを払拭する様に、彼はただの椀となったカップを握って中身を一気に飲み干す。

 そうして空になったそれを、彼は床に向けて思いっきり叩き付けた。

 空元気にも似た余所余所しい熱っぽさの中で、突然鳴り響いた破砕音は先程のそれよりも遥かに大きく、場を一瞬で凍らせるには充分過ぎるものだった。

 屈強な男達が顔を引き攣らせて固まり、あえて意識から外そうとしていた、だが出来ずに居た者の方へと視線を向ける。視線だけで無く、銃口を向けている者も居た。これ以上何かが起きれば、その者は間違いなく引鉄を引いただろうし、他の者もそれに続いたに違いない。

 しかしケインは何もしなかった。

 ただ小さく、だが深い溜息を吐くと、懐から珈琲代と壊したカップ代、更にそれへ色を添えただけの金を取り出し、カウンターに置いて立ち上がった。

 別に解っているのだ。こんな事をしても何にもならないという事は。だがもうどうしようも無いと知っていても、いやだからこそ、そうせずには居られなかったのである。

 普段はここまで酷くなど無いのだが、どうやら今の自分は、先に片付けた強盗の最後の言葉によって、かなり神経質になっているらしい。

 その事実にケインは自嘲気味に薄っすらと笑うと、これ以上の厄介事は勘弁してくれとはっきり顔に書いているマスターに向けて目礼し、奥の階段へと歩き始めた。

 ここに来た目的の一つは済んだが、まだもう一つ残っている。

 今の精神状態で言えば、もっと重要な目的。

 つまり、休息である。

 何の事は無いが、だがそれは必要な事だ。如何なる怪鳥であったとしても、巣に帰り、番を求め、心身を休めなければならないのだ。それすら満足に取る為には、畏怖を持ってこちらを見つめている、野良という意味で似てはいるが決して相容れる事の出来ない犬の群れの中を通らねばならないと思うと、実にうんざりする。

背中と言わず体全体に注がれる視線を感じつつ、彼は足早に歩いて行く。

 途中、恐らく保因者だろう、顔を隠したフードの下で訳知り顔の、哀れみに溢れた笑みを浮かべる男の脚を踏み砕きながら、ケインは宿として寝泊まりしている二階へと上がった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ