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13.一千一瞬物語(ウェスタンナイト)

 傾け出した日もそろそろ終着点に至ろうとする頃、眼を眩ませんとする光に照らされたアリゾナの荒野を、ケインは愛馬セレーネを駆って進んでいた。歩みは小走りという所であり、八本の脚は確かな足並みを持って砂地を蹴ると、軽やかに前へと行く。

 そして、手綱を握る彼の両腕の間には、アリスが跨っていた。スカートが捲れぬ様横向きに座り、雌馬の首にそっと腕を這わせて体を支えている。その表情は穏やかであり、黒い瞳には慈しみの光が湛えられている。

 それにしても、大変な目にあったな。

 馬上で揺られながら、薄っすらと笑みを浮かべて、ケインはそう思った。

 この少女……と言っても人形だが、そうにしか見えないのだから仕方が無い……を無事に父親という者の所まで連れて行く。最初に想定していたのはそれだけだった。だというのに何の因果か、気が付くと物騒極まりない連中や街の者達に追い回される羽目になっていた。

 こうして逃げ切れたから良いものの、捕まっていればどうなっていたか。

 彼一人ならばどうとでもなるけれど、アリスが居る今では、ぞっとしない想像だ。

 だが、何はともあれ、街を抜ける事は出来た。今は一路、彼女の親元へと向かっている。酒場でちらりと見たローラが、あの後どうなったのかが気になるが、今一番の関心は、このまま無事に辿り着く事が出来るのかである。

 しかし最後のは、こいつのお陰、だな。

 そう思いつつ、ケインはアリスからセレーネへと眼を動かした。


 彼とこの奇妙な雌馬が出逢って、どれほどの月日が経ったかは、本人達も定かではない。

 覚えているのは、まだ大鴉(ネバーモア)と呼ばれる以前の頃、先住民族達との戦闘に陥り、からくも勝利するも負傷したケインの元へ、ひょいと彼女が訪れた事である。

 原始を思わす森の中で一人倒れていた彼は、枝が折れる音を耳元で聞いた。

 顔を横に向けると、八本の脚をした黒い馬が歩み寄ろうとしている。

 その異形の姿に、ケインは最初、幻覚かと思った。即ち人々が死ぬ間際に見るというアレだ。

 とうとう迎えが来たか、と彼は自嘲した。

 経験に乏しく幾度も傷を負いながら、しかしその体質が故に、ケインは生き残って来た。

 それもこれで終わりという訳だ。

 どうせ特に目的も無いのだから終わるならここで終わってもいい、と彼は思った。

 だが、どれだけ近くに歩み寄って来ても、怪馬が幻の様に消える事は無い。寧ろ蹄の音、静かで荒い息吹が耳元に届き、より一層現実味を増して行く。

 訝しがるケインの目の前に、ずいっと馬の頭が差し出された。

 その瞳は黒く潤み、彼の姿を映しこんでいる。

「お前……雌か。」

 格別馬の知識がある訳でも、直接性器を見た訳でも無いが、ケインはそう感じた。

 二つの眼に宿っている光が、慈母を思わすものであったから。

 と、不意に、雌馬はすっとその舌を出すと、彼の頬をぺろりと一舐めした。

 続けて、一舐め、一舐めと、頬以外の部位へと伸ばして行く。

「おいおい……まさか俺を喰うつもりじゃないだろうな?」

 それも悪くない、と言って、歯が突き立てられるのを待つも、その気配も無い。

 この妙に人懐っこい野生馬は、純粋に彼を舐める事が目的らしい。

 母猫が子猫にそうする様に、傷ついた体を癒すかの様に。

 その感触は生暖かくてくすぐったく、ざらざらして少し痛くもある。

 が、決して嫌ではない。

 ケインは暫くの間、瞳を瞑って、されるに任せていた。

 そして愛撫が為だろうか、痛みが薄れてきた腕を上げると、

「一緒に、行くか?」

 雌馬の変わった形の白斑を持つ頭を撫でながら静かに問い掛けた。

 彼女は舌を引っ込めると、ぶるんと体を奮わせ、頭を上下に動かす。

 首肯している様に見えた。


 そうして彼女は、先の脱出が時の様に、要所でケインを救う彼の愛馬となり、またセレーネという名前を与えられた。白斑が三日月の形になっている事に由来するのだが、それ以上に、この奇怪な八脚馬には、何か美しい名前を与えてやりたかったのである。

実際のセレーネ女神は、牛を聖獣としているのだが、その想いの前には関係あるまい。

 尤も、騎手が大鴉という不吉な名で呼ばれるにつれて愛馬の名前で無く、異形ばかりが広まっていったのは、やはり皮肉という以外の何物でも無いのだが。

 まぁ、事実結構おっかなくもあるんだがな。

 大鴉の噂の中で共に恐れられるセレーネの事を考えながら、ケインは苦笑した。

 何時だったか、不用意に街の中へ入れた所、酔っ払いに絡まれた挙句、後ろ足でそいつを酒場(サルーン)の屋根まで蹴り飛ばした事があった。他の馬達に突っ掛かって無用な悶着を起こした事もある。割合に相手からというよりも自分から厄介事を起こすのであり、その為に外へ出しているという面も大きい。

 きっとこいつもまた独りだったからこそ、あんな所に居たのだろう。

 そしてそれ故に、孤独を知らない者達へ当たるのに違いない。

 騎手と愛馬は似るものか、と、笑みの苦味を増さしつつ、ケインはセレーネの鬣を見た。

 最早その感覚は、愛馬というよりも相棒と言えるレベルに達している。

 実際付き合いは長い訳で、気性の荒さから何まで、良く心得ている所だ。

 しかしこの娘には平気なのだよな。

 ケインはすっとそこから眼を離すと、再びアリスの方に視線を差し向けた。

 彼以外の誰かに触られただけでそいつを蹴り飛ばす様な馬が、こうして平然と彼女を乗せて、走っている。自分が共に居るから、という訳でもあるまいに。

 その答えを、しかしケインは既に持っている様な気がした。

 アリスは稀有な存在だ。今までに出逢ったどの人間よりも清涼であり、純真であり、そして無垢である。長い時の間、物事に対し克服も諦観も出来ず、ただ停留して来た人間にとっては、正に得難い存在だ。それがほんの僅か共に居ただけで察する事が出来た。恐らくセレーネもまた、静かに己を撫ぜている彼女に、同じものを感じているのだろう。

 そう思い、同時にケインは、アリスがそこまで言うに足りる存在だと、自らが心許している事実に気付き、黄金の眼を細めて、何とも言い難い表情を顔面に浮かべた。


「……どうか、したの……?」

 頭上で気配を感じ、アリスはぐいっと首を上に傾けてケインを見た。

 彼は、今までに彼女が見た事の無い様な、顔を浮かべている。

「……何か、あった……?」

 自分は気に障る事をしたかしら、とアリスは眼を細めて再び問い掛けた。

 それに対し、ケインはただ首を横に振って、何でもない、と応えるのみだ。

 何でもない筈は無いと彼女は思ったが、しかしそれ以上言明しようとはしなかった。

 この人は信頼が置ける人物。余り詮索するのも失礼だろう、と。

 そうしてアリスは、首を戻すと、再びセレーネの首に手を伸ばし、そっとその肌を撫ぜた。 感触は解らないけれど、自らの指の動きに合わせて揺れる毛並みや、絶えず微妙に脈動し続けている筋肉を見て取る事は出来る。荒れた大地の上を小気味良く蹴って進む八本の蹄の音も、そうして吐き出される少しだけ荒い息遣いも、彼女の耳を奮わせた。

 良い馬ね。とても、良い馬。

 すぅっと口元を上げて微笑みつつ、アリスは考える。

 馬車は兎も角、馬に乗るのはこれが始めてであるし、またその脚は本来四本だと図鑑に乗っていたものが、それでもこの子は良い馬だと彼女は思った。

 それが手を通して伝わったのか、セレーネは小さく喉を震わせ、声を上げる。

 アリスもまたふふっと笑い掛けると、その様子を己が歯車達に刻み込んだ。

 これで、お父様の所に帰れるわ。

 そう思いつつ、同時に、別の所に刻まれていた記憶を呼び起こす。

 それにしても、さっきのあれは凄かったわ。

 彼女がその脳裏に思い起こしているのは、ベイツタウン脱出の最後の場面である。


 逃げてきたけれど、ここでもう一巻の終わりなのね。

 小路にて、あの双子の中国人に絡まれた時は、もう駄目だと、そう思ってしまった。

 彼もそうだと思って見ていると、しかしケインは奇妙な笑みを浮かべていて、次の瞬間に視界は急速に上へとずれ込んだ。行き成りな風景の変貌に思わず悲鳴を出してしまいつつも、気付いた時にはあの狭く暗い通りとは正反対な広く明るい空の下、屋根の上。

 何時の間に、こんな所へ。

 そうアリスが思った時には、彼は猛然と走り出していて、高みから見える光景に風が切れ、抜けて行く音が、彼女にまるで飛んでいるかの様な錯覚を与え、自らを抱えて直走るケインに、かつて抱いた様な感想を、より強い形で浮かばせた。

 本当に鳥の様だと。

 そうして彼は、一つの名で何かを呼ぶと、脚を付けるべき地の無い中空へと飛んだ。

 翼など持っていないのに、けれどもまるであるかの様に、一切の迷い無く。

 悲鳴こそ上げなかったけれど、アリスは我知らず瞳を瞑っていて、直ぐ耳元で聞こえて来る嘶きに瞼を上げれば、一頭の黒い馬に跨っていて、これは何と判断するより早くに駆け出したそれに寄り、街を後にしている所だった。

 振り返って見えたのは、呆然と佇む、或いはその場にしゃがみ込んでいる何人かの市民達であり、それを最後に見たものとして、馬はあっと言う間に街から離れて行った。


 この一連の流れは余りにも突然に起こり、そして早々と終えた。その素早さにはアリスの中にある機構の動きも急かされ、今までに感じた事の無い波形を生み出す。

 スリリング、とでも言えばいいのかしら。

 興奮であるのは確かだ。それならば新しいものを知った時に何度も得た事がある。

 だが、そんなものよりも、それはもっと、もっと激しい興奮だった。

 悲哀に並ぶ未知の感慨で、その余波は先程までずっと残っていたが、悪いものでは無かった。これが幾度も、続け様に受けたならば、堪ったものでは無いし、そうさせる事件も無い方が良いのだが、それ自体は悪くない、寧ろ心地良い、とすら言える代物である。

 正に冒険ね、不思議の国の。

 忙しなく事態が動く中で忘れていた物語を頭の中で浮かび上がらせながら、アリスは笑った。

 その中で同じ名前の少女が巡ったものを、自らもまた経験しているという喜びに。

 いや、よくよく考えると、それ以上のものがある。

 だって、あの世界にこんな荒野は無いじゃない。

 彼女はそう思うとますますに笑みを募らせた。

 そして一番最近に読んだ荒羅舞(アラブ)地方の物語を思い起こす。

 あの少女は二つの世界を巡ったけれど、私はまた別の世界を行っているのだ。

 人の手によって積み上げられた心臓を熱烈に揺り動かす感慨を前にして、この生命に乏しいと感じていた荒野はその下に豊満な大河や魅力的な財宝を秘めた砂漠へと転じる。砂と埃を掻き揚げながら走り抜けた町並みは異国のバザールで、この変わった馬は駱駝だろうか。

 それで行くと、私達は何かしら?

 カチリカチリと刻み造られて行く想像はまるで本物の乙女が抱く様な可愛げのあるもので、その正体を知る者ならば驚愕する行為ではあろうけれど、本人はそんな事など露とも考えずに無邪気な思考を続け、そしてとうとうクスクスと笑い声を上げた。


「……そちらこそ、どうしたんだ? アリス。」

 行き成り聞こえてきた声に面食らい、ケインは思わずそう眼下の少女へと尋ねた。

 笑っていたアリスは、はたと気付くと、幾分笑みを抑えながらにこう返す。

「……また、笑いそうだから、言わないの……。」

 その答えに笑ったのはケインの方だった。

 まだ月の人という言葉に笑った事を根に持っているのか。

 あれはもう過去の事だし、それに最初から悪意など無かった。

 そう弁明してから、彼は何を笑ったのかと更に乞う。

 ケインの言葉に、アリスは少し、ほんの少しだけ躊躇した後、己の空想を口にした。

「……まるで千夜一夜物語(アラビアンナイト)みたい……そう思ったの、さっきまでのものが……。」

 彼女は言った後で、また笑われるかしら、と半ば期待していたが、彼は小首を傾げる。

「名前だけは聞いた事がある、かな。」

「……有名な物語、だけれど……読んだ事は、無い…かしら……ある王様が、お姫様を次々に殺しちゃう、の……それを止めさせる為に、シェヘラザードっていうお姫様が、毎夜話を聞かせて、気を紛らわせる様とする、って話なんだけど……。」

 そう語りながら向けられる、黒々とした宝石の様な瞳を受け止めながら、ケインは首を横に振った。銃ばかり奮ってきたこの半生の中で、真っ当に読んだ本など殆ど数える程度しか無い。

 その事を彼が伝えると、アリスはふと意味深な笑みを作って、

「……だったら……私が、読んであげる、わ……家に行けば、本もあるし……。」

 頭上に居るケインへとそう言った。

 対する彼は、少し困った様な笑みを浮かべながらに、こう応える。内容はともあれ、言わんとしている事は理解したつもりなので、それに便乗する様な形で、

「ならば俺は、お姫様を殺す王様という事かい。」

 そう、ある意味では間違っていないな、などと思いつつ。

 乗って来てくれた事が嬉しいのか、アリスはくすりという笑みを再び上げた。

「……あら、それを止めさせるのが、私の役目、よ……見た事も、聞いた事も無い様な話をして慰めてあげる……貴方の物語の語り(シェヘラザード)、になるの……よ……。」

 彼はその笑みに、声に、何よりも言葉に、体中を電流が走り抜けた気がした。

 特にそう感じたのは、物語の語り部と称した彼女の、その前に付けられた言葉に、だ。

 そんな風には思ってもいなかった、しかし心の片隅で密かに望んでいた台詞。

 ケインの顔から笑みが消え、ただ真摯な、何処までも真っ直ぐな視線だけが残る。

 彼の雰囲気が変わった事に気付いたのだろう、アリスもまた押し黙ると、自分が言ってしまった言葉の意味に瞳を泳がせた後に、同じく視線を直線に返した。

 二つの瞳が、引力か何かによって互いに惹き寄せられたのは、これで四度目だろうか。

 しかし、今回はそれだけで無かった。一瞬は、一千と一夜、殊に寄れば百億の昼と千億の夜を巡る時に匹敵する感情を、想い巡らす者に与えるのである。

 堪え難く、今までにもケインを動かしてきた衝動がその胸中に灯り、彼は手綱から手を離した。そして、アリスの体の前に、そっと回り伸ばして行く。彼女は相手がしようとしている事に気付いているのかいないのか、身動ぎする事無く、ケインの方を見つめたままでいた。

 両の手が、彼女の前で結ばれんと近づく。もしアリスの頬に赤みが灯り、瞳が潤む事があるならば、この少女は間違いなくそんな反応を眼前の青年向けて示しただろう。

 だがそれは起こらず、そしてケインもまたそれ以上何もしなかった。

 戸惑いを抱かせる空白が間を作り、停滞した時が二人の間を過ぎて行く。

 そうして再び動き出す切っ掛けを生み出したのは、セレーネであった。

 石か何かでも踏んだのだろう、突然彼女の体が揺れ、胴体が僅かに反れる。

 その衝撃にアリスは僅かによろめき、ケインは咄嗟にそれを支えた。

 彼女の体に触れた時、先程までずっとそうしていたにも関わらず、心臓が撃鉄で打ち付けられた様な高鳴りを、彼は感じた。弾丸の様に、それが飛び出てしまいそうな程の、である。

 ケインは慌ててアリスを放すと、手綱を握り締めた。

 離された彼女は眼を伏せると、身動ぎ、顔を前へと戻す。

 聞こえただろうか。

 未だ脈打ち続ける胸に無視を決め込みつつ、ケインはアリスを見た。

 もうその瞳は見えず、黒く流れ落ちる髪だけが視界に飛び込んでいる。

 彼女に何と声を掛けて良いか解らず、彼は唇を閉ざした。


 ケインはアリスを抱き締めたかった。

 自らを認めてくれた者として、この聖なる少女を熱烈に。

 けれど後少し、という所でそれが出来なかった。

 今、手綱を握り閉める手が重く、汚れている様に感じたのである。そうやって挿してあるのが当然だと思っていた、後ろ腰のレイヴンクロウもまた同様に。

 アリスが類稀な者だと、純朴な者だと思えば思う程、そうでない自分が見えて来たのだ。

 不吉な声で鳴きながら、不運を齎して来た大鴉。

 そんなお前が彼女に触れて良いのか、許しを請うて良いのかと問う己自身が居る。

 成る程、自分を欺き、今抱擁してしまっても良いだろう。事実、隠している。だが、もう一つの、いや年月だけで言えば本来の姿を見た時、この少女は一体何を連想するのだろう。

 それは永劫の罰を受け続ける、狂気に囚われた月の男か、数多の者達を葬ってきた、恐るべき砂漠の王か、はたまた、全ての人間が忌避する死の象徴か。

 いづれであれ、今のケインとは凡そ懸け離れた存在として彼を見るのは確かだ。

 それを思うと、あそこで彼女を抱くだなど、到底出来るものではなかった。


 そうして気まずい沈黙が漂って行く。

 なまじ素振りを見せてしまった分、アリスを傷付けてしまった事は解っていても、しかしそれ以外どうする事も出来なかったケインに、この状況を打破する方法は思い付かなかった。

 せめてこの時が忘れ去られる様な事が起きればいいのに。

 己の行為を後悔し、それを洗い流す為の事態、それこそ敵の襲撃すら、彼は願った。その場合はその場合でまた面倒だろうけれども、視野の狭まりは、思考すら狭めるものである。

 ただ一つの幸運は、

「……あそこ……ほら、あのちょっとした谷間にある、あそこ……。」

 目的地が、もう目の前へと迫っていた事である。

 漸くか、と思いながら、彼はブーツの踵を当てて、セレーネの走りを早ませた。

 もう日は地平線の向こうに堕ち様としており、最後の残り灯が大地を燃える様に照らし出す。もう直ぐにそれも消え、今はほんの僅かしか出ていない夜の帳も、完全に空を覆うだろう。

 ついさっきは願いつつも、しかしこんなだだっ広い空間で夜襲など御免である。

 街を出て以来、追っ手がここまでやって来ている気配は無かったが、用心に越した事は無く、せめて太陽が出ている間に行こうと、ケインはその愛馬を駆って、荒野を走り抜けた。



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