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providence eden  作者: かえる
1.morning
2/106

morning―2

 だるい。

 体の異常なだるさに目を覚ました。いや、だるさというより金縛りに近い。まるで自分の体ではないかのようだ。

 視界が霞んでいる。どうやら仰向けに寝ているらしく、天井がまっしろであることは把握できる。辺りを見渡そうとするが、首がうまく動かない。そればかりか眼球の動きも鈍い。焦りと苛立ちを覚える。

 ここはどこなのだろう。日々見慣れた、自宅のベッドからの景色とはかけ離れている。


 昨日は別段何もない、普段通りの日だったはずだ。会社に行き、上司に無理難題を吹っかけられ、それを難なく躱し、その日の事務処理を済ませ、次の日は休日だからとバーに立ち寄り、ほろ酔い気分で家に帰って就寝したはずである。それから目が覚めてみたらこの状況。見ず知らずの部屋で金縛り状態。


 だんだんと視界が明瞭となってきた。やはり天井はまっしろで、まるで病院のそれだった。窓から光が差し込んでいるのか、空中を埃が点滅しながら舞っている。天井の蛍光灯は灯っていない。まるでここだけ外界から取り残されたかのように、静けさが辺りを支配していた。

 そんな中、頭の中で声が聞こえた。


 「おはようございます、このあさん。よく眠れましたか」

 「ああ、アルね。おはよう。あまりよく眠れてないみたい。頭がぼうっとするから」

 「そうですか。それはよくありませんね」

 口は動かない。声も出せない。しかし、頭の中で話しかけようと意識するだけで、アルとは会話ができた。


 アレイル・バーグ。通称アル。2025年頃より普及し始めた脳内挿入型スマートフォン、通称PK(サイコ)フォンに導入されている人工知能のこと。PKフォンは脳内に直接情報を送り込むことができるが、その受け渡しをスムーズにするための橋渡しを行うことがアルの仕事。PKフォンユーザーは彼女との会話を、さながらテレパシーを使うかのように行うことができる。


 「体の具合はどうですか?」アルが尋ねてくる。

 「まるで駄目。全く言うことを聞いてくれない。自分の体じゃないみたい」わたしは苦笑しながら答えた。

 「そうですか。まあ、まだ5日しか経っていませんから、同期が上手くいっていないのでしょう」

 アルの返答に首をかしげたくなる。いや、全くかしげることはできないのだけれど。

 「5日ってどういうこと?わたし・・・どうにかしちゃったの?」

 恐る恐る尋ねた。嫌な感じがする。動悸がし始める。

 「そうですね。このあさんは20日前の飛行機事故に巻き込まれて、現在生命保険対象者となっております」

 愕然とした。動悸が激しくなる。つまりそれは─。

 「つまりこのあさんは、一度亡くなったことになります」

 目の前が暗転する。そしてすぐに真っ白になった。

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