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レディ・アシュリーは踊らない  作者: 癒華
幼少期篇
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思考の沈黙

大変遅くなりました…

それから数日、兄の部屋で過ごした。

半ば、軟禁のようなものだったが屋敷で起こった何かを何となく察し、言われるがままに大人しくしていた。

1日の食事も全て、兄が持ってきて、その食事もパンにチーズやベーコンを挟んだだけの簡単なものだったが。

兄はそれ以外で部屋には来ず、忙しくしている様子だったので身支度も全て自分で済ませていた。

そんなことが続いたある日、部屋の外から足音が聞こえた。

兄のものとは違う。足音は私の部屋の前で止まる。私は視線を扉に向けて相手の動きを待っていた。


「失礼。無礼とは存じつつ、話を聞いていただきたく…」


低い男の声だった。

予想していない訪問に数日間呆けていた私の脳は覚醒し、焦り始める。

立場的に、容易にこの姿を見せることも声を聞かせることもできない。

どうしようか、と悩んでいるうちに男は勝手に話し出した。


「私はラグドール=クラメスという者でございます。どうか、このままの発言をお許しください」


男がその後に話した内容は、この国で今起こっていることについてだった。

国のことから遠く隔離されていた所から、一気に引き寄せられたようで目眩がした。

何でも、私はあと5年もすれば女王としてこの国の頂点に立つことになるらしい。ナンシーの言っていた通り、やはり黒の王は未だ見つかっておらず継承権が私に移行するという。

私が理解できたのはそれくらいで、他は貴族の勢力や思惑など、凡庸な頭では理解できない話だかりだった。


ひとしきり話し終えた男は最後に、

「覚悟をお決めください。貴女はここにいていい方ではない」と言い残し去って行った。


どこかで聞いたことのある台詞だな、なんて思いながらぼんやりと扉を見つめた。

私の姿も声も聞いたことがないのに、そう言い切ってしまう男が不思議だったが、考えることがひどく億劫なものに感じた。


今の私にできることといえば、私を守ってくれる兄の帰りを待つことだけだった。





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