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レディ・アシュリーは踊らない  作者: 癒華
幼少期篇
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憎悪

2話連続投稿です。。

いつもと同じ日だった。ナンシーが用意してくれた服を着て朝食を済ませ、勉強をする。だが突然、エリシアが勉強をしたいと言い出し、先生は一人しかいないから、と一緒に勉強することになった。エリシアと話す機会なんてないから緊張しながらも真面目に先生の話を聞いていた。エリシアはというとつまらなそうにペンを弄んでいた。


「では、この問題はどうやるか分かりますか?」


「はい。こうですか?」


「その通りです。アシュリーさま、素晴らしい。」


この先生は淡々としているが、出来た時には褒めてくれる数少ない先生の一人だ。次の問題に取り掛かろうとした時、エリシアが声を上げた。


「つまらないわ、こんなの。だいたい、私のような身分ならこんなことしたって何の意味もないじゃないの」


ペンを放り投げ、席を立つエリシアを見上げると憎しみを込めた目で睨まれた。慌てて、目をそらすと鼻で笑われてしまった。


「私、やっぱり、部屋に戻りますわ。どうぞ、お続けになって」


エリシアが部屋を出て行った後、何もなかったかのように始められた勉強はエリシアに睨まれた目がチラつき先生には申し訳ないが何だか身に入ってこなかった。


勉強が終わり、兄の元へ行こうとするとエリシアにばったり会ってしまった。エリシアは私を見つけるといつもなら無視するはずなのに、今日は近づいてきた。先ほどのこともあり、身構えてしまう。


「ここで何をしているのかしら」


「あ、の、私、」


「貴女、本当に11年間も学び続けてきたの?そのはっきりしない喋り方見ていて腹がたつわ」


何も言い返さない私を見て更にエリシアは苛立ったように私に詰め寄る。


「きっと、神も貴女を選んだのは間違えだったのね。こんな子が妃になれるはずないもの。どけて、邪魔よ」


ドンっ、と押されよろめいた私に目もくれずエリシアはさっさと歩いて行ってしまった。きっと今の私は酷い顔をしている。そんな顔は兄に見せられないと思って部屋を訪ねるのは明日にしようと自室に戻った。

ナンシーは心配そうにこちらを窺ったが、今の私には何の気力もなかった。



この家に来てから、分かったことがある。本は絶対ではない、ということだ。本に描いてある家族像と私の家族はまるで違う。兄だけは本物の家族だと思えるが、母はあからさまに私に興味をもたず、姉はいつも私を憎らしげに睨む。

自分の何がいけないのだろうか。何が気に入らないのだろうか。こんなに、勉強も稽古もして一人前の妃になれるように努力をしてきているのに。これでは、まだ足りないということなのか。なら、もっともっと頑張れば母も私を見てくれるかもしれない、姉とも仲良くなれて、兄はもっと私を褒めてくれるかもしれない。明日から、先生にお願いして宿題を増やしてもらおう、と考え、その日は眠りについた。


*********


妹が嫌いだ。

あの珍しい黒髪も黒い瞳も忌々しいものに思えてしまう。

妹が嫌いだ。

私から全てを奪っていく妹が。

あんな子、妹じゃない。怯えたように上目遣いで私を見る目やはっきりしない喋り方に小さな声。

生まれた時から、王妃となるべく勉強してきた為、頭は確かにいい。だが、それだけだ。あの子にあの煌びやかで美しい玉座はちっとも合わない。やはり、あそこは私の為の席だ。


どうすれば、あの愚かな妹は傷つき苦しむだろう。

どうすれば、玉座から引きおろせるだろう。


あの子が来てから私の頭はそれでいっぱいだ。

ひとつ、いいことを思いついた。


口元が自然に弧を描くのが分かる。

これからはきっと愉快な日になるに違いない。


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