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レディ・アシュリーは踊らない  作者: 癒華
幼少期篇
32/52

秘密

説明が多いです

あの後、神族の子供たちから聞けたのはごく僅かな情報のみだった。

矢継ぎ早に質問をしたが、その度に子どもたちは小首を傾げ『知ってるー?』『知らなーい』『分からない』と返されるだけであった。

それでも分かったことがあった。

ここには、元々10人の神族がいたらしい。だがある日、子供たち曰く、まん丸いおじさんたちが来て選ばれた子は目隠しをされ「楽しいところ」に連れて行ってしまったらしい。

そのまん丸いおじさんたちが来るのは不定期で残っている子どもたちは皆、その「楽しいところ」に行くのを心待ちにしているらしい。


それを聞いた時、頭によぎったのは人身売買という言葉だった。

神族を人身売買など考えられる話ではないが、神族の力を発揮するに不可欠な目を覆う行為や「楽しいところ」と言って一人ずつ攫っていくのも人身売買のやり方に似ている。


パラディン王国は人身売買が多いと聞く。この国の仕業とは言えないが、誰かが神族を人身売買している。

それは到底、許される行為ではなかった。


そしてもう一つ、分かったことは、子どもたちの母の存在であった。

どうやら神族の特別な力の中には夢渡りというものがあるらしく、たまに子どもたちの母が夢を渡って話をするのだという。

その話の内容はあまり詳しく教えてはくれなかったが、どうやらその母も子供たちの居場所を探しているようだった。


黒の王様の運命と言ったということは紛れもなく何かを知っているということでもあり、さっそく神族が住まう地へ赴こうと決意した。


が。やはり、気に病まれるのはここに残されていく神族たちだった。

自分がいない間にそのまん丸いおじさんたちが来て人身売買を行うかもしれないと考えるとどうしようもなかった。

とはいえ、この子たちを連れて帰るわけにもいかない。

とにかく、神族は未知な存在であり簡単に触れ合っていい存在ではないのだ。


どうしようかと悩んでいると服の裾を左右から引かれた。


「おにーさんもここにいる?」

「ここにいよーよ!」

「楽しいところにいっしょに行こ!」


あどけない笑顔は無垢で疑うことを知らなかった。


「いいかい?私は今から出て行く。でもすぐに戻って来るから君たちはここから出てはいけないよ」


わかったかい?と頷きを促すと子どもたちがきょとん顔で自分を見上げている。


「楽しいところに行かないの?」


「そのまん丸いおじさんたちが来たとしても付いて行ってはいけないよ」


「どーして?」


子どもたちの前に膝をつき、ひとりひとりの顔を見渡す。


「お母さんに会いたいかい?」


全員が頷いた。


「じゃあ、会わせてあげる。そのためにはそのまん丸いおじさんたちに付いて行ってはいけないんだ」


子どもたちの頭の中ではその2つのことが繋がらないようだったがおずとずと頷いてくれた。


「そのおじさんたちが来たらなんとしてでも追い返すんだ」


「わかったよ」

「追い返すからはやくもどってきてね」


不安そうな顔をする子どもたちの流れる銀色の髪をおそるおそる撫でた。


最後に見送ってくれる子どもに心配はいらない、と笑いウラヌスに跨った。


手綱を握るとウラヌスは来たとき同じように闇に包まれた魔境の森を一心不乱に駆けて行った。





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