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レディ・アシュリーは踊らない  作者: 癒華
幼少期篇
31/52

若き騎士

更新停滞申し訳ありません

ラグドール卿はひとりになった会議室で深い溜息をついた。

そして、いつまでもここにいる訳にはいかないと会議室を出ると穏やかなテノールがその足を止めさせた。


振り返るとそこには茶髪の優男が笑顔を浮かべて立っていた。

それを見て、またひとつ溜息をつく。


「こんなところで何をしている、ルーカス」


ルーカスと呼ばれた男は、更に笑みを深めてラグドール卿に近づいた。


「会議はどうでしたか?叔父上?」


「そのニヤケ顔をなんとかしろ。バーハティア王国の期待の騎士が盗み聞きとは関心せんな。」


そう言うと、ルーカスはわざとらしく手を上げて肩をすくめた。


「違いますよ、叔父上。会議室から出てきたアトリウス卿たちの顔つきを見て悟ったんです」


決して盗み聞きなんて、と釈明するルーカスは実にいい笑顔を見せている。


「…そう、あからさまに嬉しそうな顔をするな」


じとりと睨むがルーカスには全く意味がないようだ。


「叔父上も嬉しいでしょう?このままアトリウス卿の権力の拡大は防ぎたいですもんね」


そんな甥の言葉を無視して足早にその場を去る。

甥は叔父の素っ気なさに苦笑しながらもその足が玄関に向かっていることに気付き目を丸めた。


「叔父上、もう帰られるのですか?」


「ああ。会議は終わったからな。」


「母上の元にも顔を出さないつもりですか?」


ルーカスがその名を出すとラグドール卿は明からさまにその顔を歪めた。


「…今日はいい」


「前回もそう言っていましたよ?実妹なんですから…」


ルーカスの言葉を聞かないふりをして馬車にさっさと乗り込む。

相変わらずだな、と笑うルーカスを一瞥し真っ直ぐ前を見てラグドール卿は口を開いた。


「ルーカス。アトリウス卿には気をつけろ」


「ええ、もちろん」


シリアスな雰囲気を出したのにも関わらず、穏やかな笑みをたたえたままでいるルーカスにラグドール卿は溜息をつく。


「何か起きたらすぐに早馬を飛ばせ。お前も私の甥だ、用心しろ」


「はい。叔父上もうっかり寝首をかかれないように」


軽口をたたく甥に呆れながらもラグドール卿は馬車を出すように合図を出した。


あっという間に城から離れて行く馬車を見送るルーカスは自分の後ろに構える大きな城を見据えた。


「黒の女王の誕生、か」


ルーカスは腰の剣を強く握り、城へ戻っていった。




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