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レディ・アシュリーは踊らない  作者: 癒華
幼少期篇
25/52

誰がため

更新遅れました。。。

イライラする。

苛ついて物に当たるなんてキャラじゃない。あれでは、八つ当たりと見られても仕方がない。


イライラする。

ギリっと歯をくいしばると、いつの間に現れたのか自分の片割れがそこにいた。


「…アイン」


アインは、口を覆い隠していた布を取り口を開いた。


「ツヴァイ、落ち着け」


「分かってる。分かってるけど…っ!」


焦るなんてキャラじゃない。

どうして目の前の片割れはこうも冷静でいられるのだろう。


「今回のことは誰のせいでもない。それは主も分かっていらっしゃる」


分かっている、そんなこと。

あの残酷で頭のキレる主は意味のないことなどしない。

分かっていることを言われるのは腹立たしい。


「…ツヴァイ、自分の落ち度を悔やむのは構わない。だが、それを表に出すな。ましてや、姫にあんなことを言うのは八つ当たりだ」


分かってる。知ってる。

アインが今言ったことは、全部、ついさっきまで思っていたことだ。

そんな思いを込め、睨むとアインは静かに溜息をついた。

それが、癪に障った。


「なんだってアインはそんなに冷静でいられるんだよッ!今回、国境辺りで一騒ぎがあったのも、あの花のことも全部防げなかったのは全部落ち度だ!主の側近である俺たちの!」


こんなこと言いたいんじゃなかった。

だけど、いつも軽口を言い慣れた口は止まることを知らない。


「それなのに、主には連れて行ってもらえなかった、あの人はこんなところで止まっている時間なんてないんだ…!」


「…確かに落ち度だ。だが、今俺たちにできることはこの屋敷の警護だ」


屋敷の警護と言っていながらも、主から課されたのは姫さんの護衛だった。

黒を持つ、何にも知ろうとしない主に愛される子の。


「アイン、分かってるだろう?神の新たな予言の期限が来年だって…!」


悲鳴に似た声をあげると初めてアインの顔が顰められた。


「それなのに、黒の王様は全く姿を表さない!黒を持つ者なんてこの世界には2人しか存在しない、それなのに…」


おかしい、と誰もが思っている。もう王は存在しないのではないのかとすら思えてくる。


「ツヴァイ、焦るな。お前は優しすぎる」


優しい?俺が?

そんな言葉初めて言われた。


「はっ、冗談だろ?」


馬鹿にしたように笑ってやるが、アインは何も言わない。


「俺が優しい?そんなわけないだろう、」


吐き捨てるように言ったそれにもアインの表情は変わらない。


「…あの姫に肩入れしているお前は優しい」


「さっきの聞いてなかった?あんなこと言ったのに優しいとか、」


「お前の言ったことは全て真実だ。あの姫はいつまでもあのままでいていいはずがない」


「それ、は…」


「ツヴァイ。あの毒師に俺が嵌められた時、あれを追い出すために本家に頼み込みに行ったのは知っている」


身が固くなる。

ツヴァイには言わないでくれと主に頼んだのは無駄だったようだ。


「主の命令だったからだ…」


アインをチラと見る。

表情は先ほどより和らいだように見えるが、実際、その表情はほとんど変わっていない。


「それに、結局あの毒師は最悪な状態で終わった…何の罪も償わず!本当は俺が殺してやるつもりだった!それでアインの前に連れてくるつもりだったっ!」


それなのに、と唇を噛みしめる。

本当に今日はキャラじゃないことばかり、している。


「ツヴァイ。あの姫はまだ毒慣らしのことを思い出していない。まだ11にも関わらず3人も殺してしまう魔力を持っている。主の魔力が破れるのも時間の問題だ」


「ああ…分かってる」


「それまでに俺たちは、あの姫を取り巻く不信を取り除くんだ」


「来年までにだろう?」


はっ、と鼻で笑う。


「そうだ。来年までには」


「でも!もし、来年俺たちが必死こいて姫さんのことを守り通しても王が見つからなかったら、」


「ツヴァイ」


アインの咎める声なんて聞こえないふりをした。


「アシュリーちゃんは、処分されてしまうんだろう⁈」


そう叫んだ時、扉の後ろに人がいるなんて俺もアインも気づくことはなかった。


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